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ゲームデザイン

本作の戦闘は、シンプルでプレイヤーの介入できる要素は少ない。そのため、基本的に劣勢を覆すことは難しい。このようなルールの下で勝利を得ようとするのであれば、「プレイヤーの腕で戦略的不利を挽回する」ことよりも、「プレイヤーの腕で戦略的優位を確立する」ことが重要となる。

それは、外交によって敵を絞り内政によって兵力と兵糧を整え破壊工作によって敵を弱体化させることなど、要するに戦略級シミュレーションゲームを構成している様々な要素を組み合わせるのが重要になるということである。このあたり、本作のバランスは良くできており、あらゆる手段を利用して勢力を拡大していく感触を存分に味わうことができる。
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ゲームの展開

上記のように、『戦国夢幻』の戦闘に勝つためには、その準備の方が重要となる。しかし、自国と敵国の人材、兵力、国力などの対比により、必要な手段も異なってくる。

例えば自勢力が弱小である場合、充分な兵力や兵糧を確保できないことから、自勢力以下の敵勢力の城を攻撃しても、城を落としきれないことが多い。このような場合には、敵城に工作員を送り込み、「不穏」によって敵城の士気を下げた方が効果的である(このゲームでは、敵の城の士気を「0」にすれば、攻城戦に移行することなく、即座に敵城を落とすことができる)。

しかし、ある程度人材がそろっている敵の場合は、「不穏」に対して「警戒」を行ってくるため、工作要員が捕えられる可能性が生じる。こうした相手に対しては、正面から戦闘を挑んだ方が良い。そのためには相応の兵力と兵糧が必要となるが、それは「不穏」の活用によって攻略できる城を占領していくことで蓄積することができる。

強大な軍事力と、それを支える国力を確保するころには、同レベルの敵勢力が生まれている可能性がある。このような相手に対しては、敵の領土の手薄なところで破壊工作を行って敵を弱体化させた後、それまでに蓄えた軍事力で敵の主力部隊に決戦を挑む手段が有効となる。つまり、これまでに用いてきた謀略と軍事力の両方が不可欠となるのである。

 これらのことから、『戦国夢幻』では、単なる領土の拡張だけでなく、領土拡張のために用いる手段の変化によっても自勢力の成長を実感することができると言える。また、どの敵にどの手段を用いるのかはプレイヤーの判断に委ねられているため、『戦国夢幻』におけるプレイヤーの技量は、戦闘ではなく、このような部分で発揮されることになる。
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ゲームバランス

『戦国夢幻』には、資金の概念が存在せず、兵糧が資金の役割を兼ねている。そのため、兵糧は軍事行動の他、「築城」や「徴兵」を実行することでも消費される。こうした事情から、兵糧を消費する機会はきわめて多く、その消費量も膨大なものとなる。

兵糧を確保する手段のうち、最も基本的なものは秋の収穫である。この収穫は税率によって変動するが、税率を低くすると、城の「人気」が上がり、「人気」が上がることで軍団の「士気」が上昇しやすくなる。「士気」は『戦国夢幻』における軍事の要であり、「士気」さえ高ければ、戦闘において戦力の多寡を逆転させることも不可能ではない。

しかし、税率を下げれば、当然秋の収入は少なくなり、莫大な兵糧が必要となる攻城戦では苦戦を強いられることになる。そのため、兵の強さと国の豊かさは両立しにくく、そのバランスを取らなければならない。

さらに『戦国夢幻』には農閑期と農繁期の概念があり、農繁期になると各武将の知行で養われている「民兵」が3分の1に減少する。このデメリットに対しては、傭兵を雇うか、「動員」によって農繁期の「民兵」を農閑期並みに引き上げるという打開策があるが、前者は雇用費用と維持費がかかり、後者は秋の収入が半減する。この点においても、軍事力と経済力を両立させることは難しくなっている。

そのため、序盤において大軍を動員することは困難であり、上記のような「不穏」を使った敵城の攻略は、兵糧の消費を抑える意味でも有効な手段となる。また、大軍を自在に動かせるようになっても、その分だけ兵糧の消費も莫大なものとなり、後方の兵糧を前線に集中させる程度には兵糧の備蓄に気を使う必要がある。このあたりのバランスは、なかなか良好であると感じられる。
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行軍ルートと戦略的駆け引き

以下は、個々の特徴の中でも、特筆するべきものを取り上げる。『戦国夢幻』はリアルタイムでゲームが進行するため、実際に軍団が進行ルートを通り、敵城や敵軍団と接触することで戦闘となる。つまり、出陣から戦闘までの間にはタイムラグが存在することになり、このタイムラグをどのように活用するかで戦略的な駆け引きが生じる。

例えば、自勢力の攻勢の際には、囮を出して敵城の駐屯軍をおびき寄せることや、防戦の際には、圧倒的な兵力で侵攻してくる敵の退路を断つことにより、敵と戦うことなく退却を促す事も不可能ではない。そのため、進行ルートの確保と選定は非常に重要な要素であり、こうした判断についても、やはりプレイヤーの経験やセンスが試されることになる。
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身分とゲームシステム

『戦国夢幻』の人事の根幹となるのが「知行」である。「知行」を持たない武将は、ほとんどの命令を与えることさえできない。さらに「知行」は兵士数にも直結しているため、「知行」の少ない武将は「戦闘」が高くても、戦場では役に立たない。こうした事情から、特に戦闘要員に知行を多く割り振りたいところであるが、武将の「知行」は、身分によって最大値が定められている。

『戦国夢幻』には12の身分があるが、最高クラスの「主君」が最大25万石の知行で15000人の兵士を養えるのに対し、最低クラスの「地侍」の知行は最大でも2000石、兵士も120人に留まる。さらに、身分は各能力値に補正を補正を与える仕組みになっており、見た目は同じ「戦闘」が「A」の武将であっても、内部的な数値には大きな開きがある。

そのため、戦闘「A」の真田幸村や島津義弘であっても、身分が低ければ、身分の高い織田信雄や羽柴秀次程度の能力しか発揮できず、逆に言えば、能力の低い武将も身分さえ高ければそれなりに役立つ仕組みになっている。

また、「知行」は自勢力の石高が絶対的な上限となっている。そのため、管理することのできる武将数も国力に左右されることとなり、身分が高い武将を有効に活用するためには、領土を拡張する必要がある。そのためには近隣勢力を併合するのが最適であり、これによって『戦国夢幻』における領土拡張のモチベーションは維持されているのである。
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「忍者」と「剣豪」の特性

『戦国夢幻』では、「忍者」と「剣豪」が固有の身分として設定されている。いずれも、得意分野(「忍者」は「謀略」、「剣豪」は「戦闘」)においては家臣最高ランクの「宿老」相当の補正があるが、最低限の兵士しか率いることができないため、戦場では役に立たない。

しかし、「忍者」は「謀略」能力が高いだけでなく、絶対に捕縛されないという特殊能力があるため、工作要員として裏方に徹すれば、ゲームの難易度を左右するほどの有用性がある。 『信長の野望』シリーズでは、忍者が一級の戦闘要員として戦場の表舞台に立ち、大活躍する作品もあったが、それよりは忍者という存在の特異性を表現できているという印象を受ける。

一方、「剣豪」は軍団内に編入していると、軍団長の死亡率が下がるという特殊能力を持つ。『戦国夢幻』は武将が戦死しやすく、特に軍団長が戦死した場合、即座に敗北となるため、保険としては有用である。しかし、前述の通り兵士数自体は最低クラスであるため、戦闘そのもので活躍することは難しく、非常に使い辛い。

もっとも、『戦国夢幻』では、「剣豪」に限らず、個々人の「戦闘」よりも、兵士の数や士気の方がはるかに重要である。そのため、「剣豪」の存在自体が、個々人の力量が戦況を左右する時代は終わり、集団戦闘の時代に移り変わったことを顕著に表していると言えなくもない。
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外交システム

『戦国夢幻』の外交自体は、シンプルで特筆するべき部分はない。特に、中盤以降は外交が不要となり、能力値の「外交」の影が薄くなることは、むしろ不満点に分類される。

しかし、相手の石高規模に応じて友好度が変化するというシステムそのものには、注目するべきものがある。これは、圧倒的に強大な相手に対しては、下手に出ていることを表しているためか、自動的に友好度が上がっていくが、同レベルの相手に対しては友好度が下がりやすく、数倍程度の石高差の相手に対しては、もっとも敵対心を抱きやすくなるという仕組みである。

この外交関係のシステムにより、プレイヤーが弱小勢力でゲームをはじめた場合は強豪勢力と同盟を結びやすく、また、同盟を維持しやすい。しかし、自勢力が勢力を拡大するにつれ、同盟を結んだ強豪勢力も敵対心を抱き、やがては同盟破棄にいたり、雌雄を決するという展開が起こりやすくなっている。

また、この仕様により、クリアが近づくころには残る勢力のほとんどとは外交関係が良好になっている。これは、残る全勢力と同盟を結ぶことでゲームクリアとなる「同盟統一」の達成と極めて相性が良く、クリアまでの手間を大幅に省いてくれる。
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CPUの行動

『戦国夢幻』のCPUは特定のコマンドを絶対に使わないという性質を持つ。例えば、野戦では「撤退」せず、攻城戦では「包囲」以外の方針を選ばない。また、「外交」コマンドも使用しないため、友好度の変化は勢力間の強弱関係によってのみ変動する。さらに、「内応」も使ってこないため、プレイヤーにとっての「忠臣属性(裏切りやすさを表す)や一門衆(「内応」の対象外となる)の価値は低くなっている。

これらを、システム的な欠点と見なすこともできる。しかし、例えば、攻城戦においてCPUがリスクの高い「火攻」、「水攻」、「干殺」を使用した場合、CPUが失敗時のリスクによって自滅するのも拍子抜けであるが、CPUの時だけ成功率が高くなるというのも相当ストレスがたまるものである。また、CPUだけ「内応」を的確に成功させたりしても、やはり苛立ちが募ることは間違いない。

このような視点から見ると、CPUが使用してこないコマンドは、CPUが使いこなせない(外交内応)、自滅する可能性が高い(攻城戦)、プレイヤーのストレスになる(撤退)もののいずれかに分類されることに気付かされる。つまり、これらのコマンドをCPUが使用しないことにより、プレイヤーは、これらを使われることに対するストレスから解放されているのである。

もちろん、これらのコマンドをCPUがうまく使いこなせることがベストであるが、それが技術的に難しいのであれば、CPUが使いこなせないコマンドをCPUの行動から排除してしまうことは、ベターな選択肢であると考えられる。

なお、この他にCPUのみに適用される特典として、敵城の情報の開示(武将を敵城に派遣しなくても情報を確認することができる)と大名死亡時の後継者の制約がない(一門衆でなくても後継者になれる)がある。そのため、基本的にプレイヤーとCPUは異なるルールでゲームを進めていると考えた方がよさそうである。
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