ハンドブック紹介

 

   項劉記ハンドブック 名言・迷言集 第一部  


_
賢い領国経営術とは?

●……このくそ親父、いつか殴ってやる(18ページ)

 張良も心の中では、このようなことを考えている。しかし、それをおくびにも出さず、助言役に徹するのが張良の張良たるゆえんである。このあたり、不満をあからさまにして何度も項羽と喧嘩する范増とは格が違う。



はは〜ん、
  貴公はそれで項羽のもとから逃げ出してきたのだな?(19ページ)


 『項劉記』では、劉邦陣営ならば「統率力」、項羽陣営では「戦闘力」に応じた給与が支払われる。よって、「統率力」が高く「戦闘力」の低い張良のような人物は、項羽陣営ならば安月給であるが、劉邦陣営ならば高給取りとなる。見出しは、それをからかった劉邦のセリフである。

 ちなみに、張良が項羽のもとを辞した本当の理由は、本書(150ページ)やゲーム内の「張良志願」イベントでも触れられているように、主君の韓王成が項羽に殺されたためである。



●知ってても知らぬふりをするのが
  大将というものである!(21ページ)


 本書の劉邦は、史実における漢の高祖であると同時に、そのはるか未来に発売された『項劉記』というゲームのキャラクターでもある。よって、功臣粛清ネタを平然と言い放つこともあれば、張良が仙人の修行をはじめることもお見通しである。

 後代の歴史を知っている劉邦に対して張良も疑問を投げかけずにはいられないが、劉邦は、この言葉で返した。張良が内心で「(答えになっとらんぞ)」と言うように、本当に答えになっていない。



●夏侯嬰!車の用意だ!息子はいらんぞ!(23ページ)

 「宴会」コマンドを勘違いして美女をはべらせる劉邦をたしなめるため、張良は「項羽が攻めてきた」と嘘をつく。その際の劉邦の狼狽ぶりがこれである。史実にも、「彭城の戦い」で項羽に惨敗した劉邦が、夏侯嬰の馬車で逃げる途中、スピードを上げるために連れてきた息子を馬車から投げ落としたという逸話があるが、はじめから子供を置いて行こうとするあたり、よりひどい方向に進化している。

 ちなみに、「スーパーガイドブック」の劉邦は、項羽に敗れた後、夏侯嬰まで捨て駒にして逃げ出そうとするが、さすがに夏侯嬰に見放され、置き去りにされてしまうというネタがある(*)。



●広武で天下二分の和約を結んだあと、
  退却する項羽の不意をつくように勧めたのは
  だれだっけなあ……(24ページ)


 張良には痛いところを突かれてばかりの劉邦であるが、時には張良を言い負かすこともある。これは仁義や徳を説く張良に対する劉邦のセリフ。さすがの張良も、これには話題をそらすしかなかった。



●「菜種油はきりがなたね」(24ページ)

 「略奪」を正当化する劉邦の言い分。「百姓と菜種油は絞れば絞るほどよい(江戸幕府のモットー)」につなげたジョークである。実際、民衆は金や食料を隠し持っており(「陰金」、「陰米」)、それらを略奪で奪えることもあるため、絞れば絞るほど利益が上がるのは事実である。

 もともと農民であった劉邦だけに、農民の実情を把握した上でのセリフであると言いたいが、劉邦は仕事をせずに遊んでばかりいた。張良も冷ややかに、その点を突いている。
_
_
人海戦術指南

●○月×日、黥布が無礼な真似をした。覚えておれ(28ページ)

 功臣粛清ネタ。傲慢な態度で出迎えられ、激怒する黥布に対する劉邦の逆恨み。ちなみに、劉邦が漢に下った黥布をぞんざいに出迎え、黥布が激怒したというのは史実である(*)。しかし、実際には、その後のもてなしは丁重であったため、黥布は機嫌を直している。



●確かに劉邦様は勇武英名いずれも項羽におよびません。
  その上傲慢で礼儀に欠け、女好きで貪欲と、
  ……本当に問題だらけですね(28ページ)


 項羽と劉邦の力量の比較について、「まぁーったく、及ばぬ!」と自信満々に返した劉邦に対する張良の冷ややかなツッコミ。元ネタは、おそらく韓信が漢の大将軍に任じられた時の劉邦と韓信のやりとりである。



●うむうむ。あんな奴らは皆殺しにしてしまえばよいのじゃ(29ページ)

 劉邦でプレイした場合、范増、竜且、鍾離眛ら項羽寄りの人物は配下になりにくい。そのことに対する劉邦のコメント。実際このクラスの人物であれば、後難を除くために斬ってしまった方が良い。これは、項羽でプレイしている場合の劉邦寄りの逸材についても同じことが言える。

 一方、張良は「なんでもかんでも斬ればいい、という考えはよくありませぬぞ」と諫めているが、捕虜を解放すると「敬慕度」が上がるため、張良の言い分も間違いではない(*)。しかし、これは能力の低い人物に限定した方が良いと思われる。



●「人衆(おお)ければ、天に勝つ」じゃな(31ページ)

 劉邦は多数の人材を抱えることの優位性を表現するつもりで見出しの言葉を使ったが、実際には「悪人が多いときは、容易に天罰が下らない」という意味であり、張良にもツッコミを入れられている。出典は『史記』の「伍子胥伝」。



●……ただし韓信殿だけは
  謀反する可能性があるのだが……(32ページ)


 歴史イベント「韓信独立」のヒント。端的に言えば、同じ軍団に韓信と通を入れなければ絶対に起こらない。ちなみに、イベントは劉邦だけでなく、項羽でプレイして韓信を配下にしていても発生する。



●よってあやつのいる部隊の退却成功率は、
  絶対に百パーセントになる……(33ページ)


 「あやつ」とは夏侯嬰のこと。劉邦が戦いに何度破れても、夏侯嬰に窮地を救われて生き延びたことが元ネタ。張良には「……わけはありません」と否定されているが、コンシューマ版では、実際に退却成功率がアップするという仕様になっている(*)。そのため、コンシューマ版では劉邦と夏侯嬰を組ませた方が良いということになる。



●いやいや、「敵国破れて謀臣亡ぶ」というではないか(33ページ)

 功臣粛清ネタ。元ネタは劉邦に逮捕された際の韓信の言葉。ここでは、劉邦が張良に対する警告として用いている。
_
_
舌戦を制す

●……この親父も沐猴の類だな(36ページ)

 「沐猴」は本文中にも解説されているが、「猿」のこと。「沐猴にして冠する」で一語を成し、項羽の無分別を批判した言葉になる。ここでは劉邦も大して変わらないという張良の心中のつぶやきとして用いられる。



●……要するに「みんなまとめて滅ぼしてしまえ」
  ということじゃろう?(36ページ)


 勝利条件を確認した劉邦のセリフ。さすがに張良も「(どこをどう読めばそういう結論になるんだ!)」と心中で突っ込んだ後、冷徹な解説を行っている。実際には相手の盟主(項羽ならば劉邦、劉邦ならば項羽)は力づくで滅ぼさなくてはならないが、残りの勢力は自勢力に取り込んでしまえば攻略対象から外れる。

 ただし、143ページの遊び方の例でも示されているように、全ての都市を直接支配するというプレイも、達成感は大きい。本作や『水滸伝・天命の誓い』のように、全領土を支配しなくても良いゲームほど、かえって全領土を支配したくなるのは、気のせいではないような気がする。



●バカいえ、「劉氏にあらずんば王たらず」じゃぞ。
  異姓の諸侯など残しておけるか!(36ページ)


 実際は「劉氏にあらずんば王たらず」に(統一後、劉邦が劉氏以外の姓の王を粛清したときにいわれた言葉)と解説が入っている。元ネタは『史記』の「呂后本紀」の「非劉氏而王,天下共撃之(劉氏に非ざる王は、協力してこれを討て)」であると思われる(*)。

 これは劉邦の死後に呂后が一族を王に封じようとした際、呂后の目論見に反対する王陵が取り上げた言葉であり、実際に劉邦が、この発言をしているシーンはない。なお、陳平らは呂后に賛同したため、呂后の意見は採用され、一時的に劉氏の王が排斥されることとなった。



●……なにもそこまで
  現実をシミュレートしなくてもよいでしょう(36ページ)


 「劉氏にあらずんば王たらず」と言い放った劉邦に対する張良のツッコミ。しかし、張良は、ただ突っ込むだけでなく、兵の消費や金と食料の浪費といった損得勘定を説いて、ただちに考えを改めさせている。このあたりの機転は、さすがである。



ほら、ゲームに感情移入する意味で、
  雰囲気というものがございましょう?(39ページ)


 劉邦から「外交」能力の有用性を問われた際の張良の返答。要するに有用性は低いということである。光栄のゲームには、この手の効果の低いコマンドや能力値が良く登場する。しかし、本作の「外交」に関しては、少なくとも盟主本隊の人物に限っては有用であるため、まだましな方である。



●儒者なんぞ糞喰らえじゃ。
  わしは奴らの顔見ると、
  無性に帽子の中へ小便を引っかけたくなるのじゃよ(39ページ)


 史実ネタ。『史記』の「生陸賈列伝」に記述がある。食其は、それを承知の上で劉邦のもとに赴き、道理を説いて尊敬を得た(*)。逆に考えれば、それまで劉邦が出会ってきた儒者は、冠に小便を駆けたくなるほど、ろくでもない人間ばかりであったということになると思われる。
_
_
 ページの最上段に戻る                               書籍紹介へ
_