ハンドブック紹介

   ランペルールハンドブック  


 基本データ
 カラーグラビア
 序 ランペルールの世界
 第1部 英雄交響曲/都市戦略編
 第2部 皇帝円舞曲/政府戦略編
 第3部 軍隊行進曲/戦術編
 第4部 ランペルール探究
 第5部 ヨーロッパ軍人名鑑
 バトルレポート
 総合評価 ★★★★★
 ナポレオンとロシアの農奴

基本データ

 初版発行は1990年11月15日。奥付までのページ数は192ページ。構成は全5部と序章を含めた6部。なお、目次には記述がないが、4~8ページはカラーグラビアである。定価は1860円。奥付から確認できる執筆者は坂木恒善、山北篤、大蟻食。本項では、1991年7月20日に出版された第2刷を参照している。

カラーグラビア

 4~8ページ。前述の通り、この部分は目次に記述がない。ゲームのキーワードを絵画や写真と短文で表現している。テーマは「司令官から皇帝へ(『アルコーレ橋のナポレオン』と『玉座のナポレオン1世』)、「軍の先頭(『フランス戦役』)、「凱旋(エトワールの凱旋門)」の3つである。

序 ランペルールの世界

 9~16ページ。本書の各部の冒頭は、ナポレオンの発言を引用している。これは以下の部の扉でも同様である。9ページと10ページでは、ゲームおよび本書のコンセプトを紹介している。10ページには、「本書は「『ランペルール』をより楽しむためのガイドである。初めてプレイする人は手引書として、すでにプレイしている人は新たな楽しみを発見する本として役立てていただきたい」とあり、これを本書のコンセプトと見なしても良いと思われる。

 11ページから15ページでは、4つのシナリオの歴史的背景と序盤の戦略を紹介している。全体地図がコンパクトにまとめられており、地図をシナリオ順にみて行くだけでも、フランスの拡張が一目で分かる。なお、シナリオ5に関する記述は一切ない。16ページでは、ゲームの流れと本書の概要を紹介している。

第1部 英雄交響曲/都市戦略編

 17~48ページ。8項目。このうち5つがゲーム攻略、3つが歴史的背景を取り扱っている。43ページまでは、各種の司令官コマンド(都市で行えるコマンド)の概要が主題となる。本書では、ゲーム中の登場人物がコマンドを解説するというスタンスを取っており、「司令官の役割」、「都市の状態を把握する」、「軍人の能力を見極める」といった総合的な解説はベルティエ、「司令官養成講座:内政(内政)」はタレイラン、「司令官養成講座:軍備(軍備)」はダヴーが担当している。

 44ページ以降は、歴史的事実に関連した読み物となっている。「エジプト遠征とクーデター」は、ゲームでも執政就任のための必須イベントとなる「ブリュメール18日のクーデタ」の歴史的背景を解説している。48ページの「ナポレオン頌」は、後世の人間から見たナポレオンの評価である。ここでは、ゲーテ、スタンダール、ヘーゲル、ニーチェ、ヴァレリーの言葉が引用されている。

第2部 皇帝円舞曲/政府戦略編

 49~80ページ。7項目。4つがゲーム関連、2つが歴史的背景、残る1つはリプレイである。69ページまでは、執政就任以後自由にできるようになる政府コマンドを解説している。「政権担当者の使命(総合解説)」はベルティエ、「政権担当者の帝王学:都市(都市への指示)」はフーシェ、「政権担当者の帝王学:人材(人材管理)」はメッテルニヒ、「政権担当者の帝王学:国際政治(外交)」はタレイランの担当である。

 ここでは、特に65ページの「外交による反仏感情の変動」と「諸外国の要請と反仏感情の変動」の一覧に注目したい。『ランペルール』では、ある国との外交交渉の結果が、他の国にも影響を及ぼすようにできているのである。そのため、ある国を邪険に扱えば、その国と友好関係にある国との関係も悪化し、対仏同盟が組まれやすくなっている。また、敵対国と講和すると自国の軍人の忠誠度や兵士の士気が上がり、こちらから宣戦布告すると、これらが低下する点(65ページ)も注意するべきシステムである。なお、第2版では「諸外国の要請と反仏感情の変動」の「一時停戦了承」に承諾した場合の項の反仏感情が「+50」になってしまっている。もちろんこれは「-50」の誤りである。

 70ページから76ページは、やはり歴史的背景に関連した読み物となっている。「対仏大同盟と大陸封鎖(70~71ページ)」は、フランスの対英戦略である「大陸封鎖」とイギリスを中心とする「対仏同盟」を紹介している。これらは、英仏双方とも他国を巻き込んだ大戦略であり、ゲームにおける同盟の構築の史実的な役割を解説するものである。

 「女たちのナポレオン(72~76ページ)は、デジレ・クラリーとジョゼフィーヌを中心に、ナポレオンを取り巻いた女性たちを紹介している。この箇所では、デジレがナポレオンの将来を危ぶみ、結婚を躊躇しているうちに、ナポレオンがジョゼフィーヌになびいたような書かれているが、一般的には、デジレの両親が結婚に反対(すでにデジレの姉ジュリーとナポレオンの兄ジョゼフが結婚しており、この結婚によってクラリー家が得たものは少なかった)しているうちに、ナポレオンがジョゼフィーヌに惹かれたように書かれることが多いようである。

第3部 軍隊行進曲/戦術編

 81~128ページ。6項目。4つはゲーム関連、2つは時代背景であり、いずれも軍事に関連した項目をまとめている。「制海権を考える(制海権)」はナポレオン、「遠征に勝つために(情報の確認、基本ルール)」はスルト、「軍団と戦術(兵科と攻略法)」はネイが解説を担当している。内容自体は、いずれも基本的な情報に留まっている。

 102~125ページは「ヨーロッパ都市案内」と題した戦場マップ集である。ゲーム中の攻略情報を中心としており、史実の事例はキャッチフレーズ的な一行にまとめられている。この点は『ランペルールガイドブック』の方がキャッチフレーズ、歴史的事例、ゲーム中の事例と話題も豊富であり、遊び心の点でも出来が良い。

 読み物は「ネルソン提督(86~89ページ)」と「熱狂から神話へ(126~128ページ)」。前者は、文字通りネルソン提督の略歴をまとめたものであり、「海のナポレオン」という副題がついている。これは、敵戦力の撃滅を念頭に置き、戦力の時間的集中と敵の各個撃破を重視するネルソンの戦術に、ナポレオンとの類似性を見出したものである。後者は、ナポレオンが兵士を奮い立たせた演説集である。この中には、ゲームのコマンドである「演説」に引用されているものもある。

第4部 ランペルール探究

 129~164ページ。6項目。リプレイに1項目を割いているが、基本的には歴史的背景を題材とした読み物が中心になっている。「ナポレオンとフランス革命(130~133ページ)」は、フランス革命中のナポレオンの動向と「ブリュメール18日のクーデタ」によって政権を握ったナポレオンが、革命後の混乱を収束させることで革命を終わらせたことを論じている。

 「ナポレオンの戦略戦術(134~141ページ)」は、ナポレオン個人の立身の手法を踏まえたうえで、当時のフランス軍の改革と、それに伴うナポレオンの手法の成功例を取り上げる一方、失敗例として対イギリス戦略と対ロシア戦略に触れている。この箇所の対ロシア戦略については、納得できない部分もあるため、その旨を後述した()。

 「皇帝の戦争(142~153ページ)」は、皇帝即位以降のナポレオンの戦争を取り扱っている。「アウステルリッツの戦い」から「ワーテルローの戦い」までが簡潔ながらも一通り紹介されており、「ナポレオンとフランス革命」、第一部の「エジプト遠征とクーデター」と、この項を合わせて読めば、ナポレオンの事績は一通り理解できるはずである。

 「ナポレオンガイド(157~159ページ)」は、「ナポレオンに関する書籍、映像、音楽について、なるべく入手しやすいものを集めた」項目である。書籍は活字本からコミック、映像は大作映画やコメディ映画と範囲は多岐にわたっており、『ランペルール』からナポレオン戦争に興味を持った人が、様々な視点から時代背景を楽しむことができるような配慮がなされている。

 「フランス陸軍広報(158~159ページ)」は、ゲームの隠し要素であるエジプト遠征、ロゼッタストーン、舞踏会、シナリオ5の存在がほのめかされている。これらの出し方を知っていれば、文章の中にヒントがあることに気付くが、この記事だけでイベントを起こすのは難しいと思われる。

第5部 ヨーロッパ軍人名鑑

 166~191ページ。「将軍たちの肖像」は、フランス軍人58人と、その他の国の軍人42人を合わせた100人の顔グラフィックと略歴を掲載している。日本におけるナポレオン戦争の知名度を考慮すると、現在においても、いまだに資料的価値は高いと思われる。しかし、残る約150人の中には、今日においても経歴を特定ができない人物もおり、やはり全ての軍人の略歴を紹介して欲しかったというのが正直なところである。

 184~191ページは「軍人一覧」となっており、全ての軍人の所属国、能力、シナリオ4までの開始時点の状況が記載されている。しかし、1ページに軍人1人分のデータを詰め込んだため、所属都市は都市番号で表され、性格や忠義などのマスクデータも掲載されていない。できれば見開きを使って1人1人の詳細なデータを掲載し、欲を言えば、『源平合戦ハンドブック』のように、最低限の略歴も欲しかったところである。ちなみに、『ランペルールガイドブック』には性格と忠義が掲載されているが、こちらには開始時点の所属都市や身分が省略されている。

バトルレポート

 本作のバトルレポートは2部構成である。前編の「わが名はナポレオン(77~80ページ)」は、第2部の末尾に掲載されており、ナポレオン本人(ただし、史実のナポレオンではなく、『ランペルール』のキャラクターとしてのナポレオンであるという断りがある)の語りという体裁で司令官時代からクーデタを起こし、執政に就任するまでを描いている。状況を見る限りでは、イタリア制圧後北上してウィーン、ベルリンを占領してスペインに転戦、泥沼の戦いの中でパリに戻り、クーデタを起こしていると思われる。

 しかし、スペイン領を占領している状態だとゲリラの襲撃やスペイン領内の予備兵の増加があり、スペインと講和しても、ゲリラの襲撃には悩まされ続ける。これは、スペインを滅ぼすまで終わらないため、スペインとの戦いを途中で切り上げるのは愚策である。ロシアにも同じことが言えるが、これらの国々と戦う場合は、一気に滅ぼすつもりで戦争を仕掛けるべきである。

 後編の「ナポレオン帝国の誕生(160~164ページ)」は、第4部の末尾に掲載されており、皇帝即位からゲームクリアまでを描いている。本項における対ロシア戦の見通しの甘さは、反面教師として参考にするべき点がある。また、6都市と隣接しているフランクフルトを最後まで残しておくというのは、防衛に割く人員のことを考慮すると、あまり良策とは言えないと思われる。

 しかし、こうした非効率的な要素こそが、このレポートをかえって面白いものにしていることは間違いない。こうした要素は読み物としての「谷」となり、勝利や成功と言った「山」の部分を盛り上げる要素を果たしているためである。逆に言えば、このような失敗を極力排除し、効率を突き詰めたプレイを読み物としても、山も谷もない単調な展開が続くだけとなり、読み手にとっては退屈なものにしかならない。これは、後発の攻略本におけるリプレイ記事のつまらなさの要因になっていると思われる。

総合評価 ★★★★★

 読み物としての面白さと資料的価値の高さから、光栄の攻略本の中ではベストと言っても良い書籍である。特に、ゲームの登場人物がゲームシステムを解説するという体裁を完成させたことは、極めて高く評価できる。

 もっとも、こうした試み自体は、それまでの書籍にも採用されている。つまり、それ自体が斬新と言うわけではないのである。本書の革命的な点は、歴史上の小ネタや史実に基づいた人間性をアピールすることで解説役のキャラクター性を強め、「この人物だからこそ、こうした解説ができる」というシチュエーションをつくり出した点にある。これにより、単なるマニュアルの焼き直しになりかねないシステムの解説に読み物としての付加価値をつけることに成功しており、後発の攻略本への影響を考えても、光栄の攻略本の1つの完成形であると個人的には断言できる。

 また、第4部の「ナポレオンガイド」は、ゲームで歴史に興味を持った読者に対し、より深く歴史を知るための配慮がなされている。私も、このコーナーを参考として書籍の幾冊かを購入しており、「ナポレオンについて知る。これが『ランペルール』を10倍楽しむ方法だ(154ページ)」。という言葉は、疑いのない事実であると確信できるが、こうした項目は、本書と本書の7ヶ月前に出版された『三國志Ⅱハンドブック』だけにしかなく、以降の攻略本は、この方式を受け継いでいない。有益性を考えると、非常に残念である。

 一方、問題点としては、隠し要素の紹介が不充分なことと、軍人データの不備が挙げられる。前者については、今日では情報が解明されているため、インターネットで調べればイベントの詳細を確認することができる。後者については、前述の通り、今日においても解明されていない部分がある。「CHRACTER FILE SERIES」による情報の補完は、『ランペルール』にこそ必要であったと思えてならない。

 また、書籍の内容とは直接関係がないが、本書の最大の問題点は、価格にプレミアが付き、定価以上の値段で取引されていることである。本書は、ナポレオン戦争の入門書としても良くできているが、そのために人に容易に勧めることができない。『コーエー25周年記念パック』が発売された際、ハンドブックの復刊があっても良かったのではないかと思われる。

ナポレオンとロシアの農奴

 対ロシア戦略では、農奴解放を行っていれば、ナポレオンにも勝機はあったとする説が述べられている(141ページ)が、それをやってしまうと、ロシアを決定的に敵に回すことになってしまう。この遠征の目的は、ロシアを屈服させることであるため、明らかに手段と目的を取り違えていると言える。

 また、ナポレオンの侵攻に対し、アレクサンドル1世は愛国心に訴えることで、農奴を戦力として取り込んでいる。戦功によって農奴から解放されることを期待した事例もあったらしい。侵略者が解放を宣言すれば、農奴が味方についたというのは、農奴の愛国心を馬鹿にしたものであるとさえ言える。これらの事情から、上記の意見には賛同できないところがある。


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