ハンドブック紹介

 

   源平合戦ハンドブック  


 ●基本データ
 源平合戦絵詞
 武者の世に
 日ノ本擾乱
 破軍・第一部
 破軍・第二部
 波底の都
 群像
 読み物・コラム
 源平合戦錦絵
 歴史再現
 総合評価 ★★★★★
 *1攻略情報の補足
 *2個人的経験に基づく補足

基本データ

 初版発行は1994年12月22日。ページ数は奥付と広告を含めて192ページ。構成は数字を割り振られていないものの、実質的には6つ。点在しているコラムなどは、目次に独立した項目を割り振られている。定価は2000円。執筆者は奥付より金子隆、稲葉義明、丘信武、牧秀明。

 『天翔記ハンドブック』の裏表紙折込部の広告では「源氏と平家の戦いを描く歴史SLG。その独特の世界観と攻略法を多彩な登場人物をメインに紹介。全拠点・全武将データを網羅!」と紹介されている。

源平合戦絵詞

 4~10ページ。カラーグラビア。城ノ内あずまの切り絵と短文によって『源平合戦』の世界観を表現している。テーマは「清盛」、「常磐」、「頼朝」、「義仲・兼平」、「安徳帝・二位ノ尼」、「静・義経」。個人的には、「頼朝」と「義仲・兼平」の黒地部分の多さと切抜き部分が強烈なコントラストを生み出しているのが印象深い。ちなみに、安徳天皇と二位の尼以外はゲーム中に登場している。

武者の世に

 11~48ページ。10項目。「乱」、「源氏」、「平氏」、「豪族・寺社」、「平泉」は、純然たる歴史的背景の解説である。「乱」は『源平合戦』の前史に触れたうえで、東の源氏と西の平氏という対立構造を提示し、本作の重要な要素である棟梁ごとに実行できるコマンドの相違の意味を明らかにしている。

 「源氏」は、源氏の誕生から平氏の隆盛に伴う没落、頼朝の挙兵、平氏と奥州藤原氏の滅亡、鎌倉幕府の成立から、その後の権力争いと北条氏の台頭までを簡潔にまとめており、これを読むだけでも、この時代の簡単な流れを把握することができる。「平氏」、「豪族・寺社」、「平泉」は、この流れを、それぞれの勢力の視点から見たものである。

 続く「武士」、「公達」、「殿上人」、「出家」、「女たち」は、それぞれの歴史的立場を述べたうえで、ゲームのシステムとの関連性に触れている。「武士」は戦闘系の能力、「公達」は、内政、外交系の能力、「殿上人」は朝廷の介入、「出家」は、このゲーム独特の仕様である「無常」と「出家」、「女たち」は、ゲームに登場する女性キャラクターの役割がテーマとなる。

 また、ページの下3分の1は、全9編の「源平合戦人物絵巻」があり、主要人物123人の顔グラフィックと略歴が掲載されている。略歴自体は「群像」と重なる部分もあるが、33ページの吉次は武将ではないため、この箇所でしか解説が見られない。

日ノ本擾乱

 49~80ページ。『源平合戦』の4つのシナリオの時代背景と勢力のデータ、序盤の攻略法を紹介している。本書では、シナリオ3の平氏の序盤の戦略として、中国地方に遠征してくる頼朝軍を全力で撃破し、四国に向かってくる頼朝軍は海上で撃破することを推奨しているが、どう考えても戦力が不足している。個人的な経験からすると、全ての資源と武将といったん九州に集めて、どうにか中国地方の頼朝軍と渡り合えるレベルである。

 また、シナリオ4の義経の戦略として、義経自ら周辺の頼朝領に攻勢を仕掛けることが推奨されている。これ自体は間違いではないが、戦後処理で捕えた武将を処刑し続けると、義経の「無常」が上がり、出家してしまうことがある。そのため、処刑したい武将もいったんは捕虜にしておき、代官に処刑を行わせると、「無常」の上昇を代官に押し付けることができる。

破軍・第一部

 81~108ページ。コマンドの解説とゲームの進め方を中心とした、純然たるゲーム攻略の項である。この項は2つの部に分かれており、第一部の「棟梁の道」では、主に統治フェイズ(『源平合戦』は、国政を行う統治フェイズと軍団を動かす行軍フェイズが分かれている)のコマンドを取り扱う。

 さらに第一部は3つの章(内政、人事、外交)に細分化されており、各章で、それぞれのコマンドを解説している。これに対する補足説明は、別項にまとめた(*1)また、各章には、本作の大きな特徴の1つである棟梁ごとのコマンドの相違が「逆引きコマンド一覧」として整理されているほか、テーマに即したデータが掲載されている。これは、後述の第二部でも同様である。

 「源平合戦宝物一覧」は、ゲームに登場する宝物のリストである。簡単な説明も記載されているため、宝物の由来が分かるのも嬉しい。ただし、各シナリオごとの所有武将に関する記述はない。

 「源平合戦官位一覧」は、ゲームに登場する官位の一覧である。こちらも、紹介されているのは官位名、読み、動員兵力、上昇する勇名と優雅のデータだけに留まる。せめて叙任に必要な勲功は欲しかったところであるが、動員兵力の10分の1の数字に勇名と優雅のうち、高い方を10倍した数字を加えると、必要な勲功が割り出せたと記憶している。

 つまり、最低ランクの「右馬允」は動員兵力が1000、上昇する能力のうち、高いのは勇名の「4」であるため、動員兵力の10分の1である「100」と勇名を10倍した「40」を足した「140」が必要な勲功となる。

破軍・第二部

 108~143ページ。第二部の「大将の道」は、「軍備」、「計略」、「行軍」、「合戦」、「戦後処理」の5章構成となっている。やはり、これに対する補説明も後述(*2)している。また、本項でも、第一部と同じく「逆引きコマンド一覧」も掲載されているが、ここでは122ページの「地形別章杼行動力一覧」に注目したい。

 これによると、平氏は海上の移動が得意、奥州藤原氏は山地の移動が得意、源氏は海上の移動が苦手で山地の移動も奥州藤原氏に劣るという特徴がある。つまり、『源平合戦』では、行軍フェイズの「移動」にも、棟梁ごとの特色が現れているのである。

 「ゲームレポート・源平合戦(136~143ページ)」は、シナリオ2の源頼朝と平宗盛による2人プレイのリプレイである。構成は三段に分かれており、上から、頼朝側、写真による状況説明、宗盛側となっており、頼朝と宗盛の間に直接的な情報のやり取りはない。基本的に頼朝側は頼朝と梶原景時、宗盛側は宗盛と平知盛の対話で話が進められる。

 ちなみに、最後は頼朝と宗盛の対決において、不利になった宗盛が「特殊」を発動させるものの「一騎討ち」が発生してしまったところで終わっているが、中段の最期の写真を見ると、宗盛が戦死したことが分かる。なお、本項は本書において唯一と言っても良いギャグ系の項目である。

 注目するべき点としては、途中で不利な平氏側は、福原から海路を経て鎌倉を強襲するという奇策をとっている(141ページ)が、頼朝側が動じなかったため、単に敵中に孤立したまま殲滅されている。「大胆な奇策」の派手さと、失敗した時の脆さを実証する好例であると言える。

波底の都

 145~167ページ。『源平合戦』に登場する39の拠点のデータと歴史的背景の解説が掲載されている。また、146~147ページにはゲームの舞台となる日本地図と各拠点のルートが記載されている。バトルレポートでは失敗に終わっているが、海路を使えば海沿いの拠点を奇襲することが可能であるため、海路のつながりには気を付けたい。

 本項では、拠点ごとにシナリオごとのデータを表示するという表示方法を取っている。さらに、各拠点の人口と農業の上限も掲載されているため、1つの拠点のシナリオごとの国力の推移と、どれだけ上限に近付いているかが一目でわかるようになっている。また、歴史的背景の解説も、その拠点において何が起こったかがまとめられており、その拠点がゲームに登場する必然性を理解させてくれる。

 ただし、このまとめ方は、1つのシナリオにおいて、どの拠点が豊かであるかなどを知りたい場合には不便である。もっとも、見やすさは、こちらの方が上であるため、一長一短であると言える。

群像

 169~189ページ。『源平合戦』に登場する全武将390人のデータである。データ的に見た場合は、シナリオ1の能力しか記載されておらず、加齢による能力値の自然上昇が考慮されていないこと、シナリオごとの武将の所在地や所持している家宝の情報がないなどの不備もあるが、「紹介」として、全武将の最低限の略歴が記されているのは大きい。これにより、本書はゲームの攻略本を越えた、歴史の入門書としての役割を強めている。

 なお、ここに記載されている人物は、全てゲーム上の能力値を持つ武将に限られる。そのため、後白河法皇、北条政子、静、金売り吉次などは紹介されていない(ちなみに、巴は武将として登場する)が、後白河法皇は本書の43ページ、政子と静は48ページ、吉次は33ページに解説がある。

読み物・コラム

 「富士川の合戦(56~57ページ)」、「倶利伽羅峠の戦い(64~65ページ)」、「一ノ谷・屋島・壇ノ浦(71~73ページ)」、「義経都落ち(79ページ)」、「平泉滅亡(80ページ)」は、いずれも、それぞれの事項に対する解説である。「日ノ本擾乱」の各シナリオごとの解説の間に挿入されており、各シナリオの歴史的背景の意味合いが強い。

 「景時の真実(89ページ)」と「直実の真実(115ページ)」は、梶原景時と熊谷直実の人物論である。ナンバー2に徹し、主君の代わりに家臣の恨みを引き受ける形となった景時の再評価と、直実の出家の動機がテーマとなっている。

 「鎌倉という時代(167ページ)」は、時代の転換点としての鎌倉時代を論じている。テーマは武家政権の確立と新仏教の誕生であり、前者は朝廷に恐れることなく「承久の乱」を鎮圧した北条義時、後者は国家鎮護としての仏教を大衆救済としての仏教に変えた法然を主役としている。

源平合戦錦絵

 「荒武者編(144ページ)」と「公達・公卿編(168ページ)」に分かれた武将のバストアップグラフィック(『源平合戦』の野戦では、両軍の大将のバストアップグラフィックが表示される。ちなみに、バストアップグラフィックの顔の部分をトリミングしたものが顔グラフィックである)集である。

 「荒武者編」では、比企能員、梶原景時、武蔵坊弁慶、武田信光、城長茂、金子忠家、藤原景清、足利忠綱、斎藤実盛、「公達・公卿編」は、平盛嗣、平盛俊、平時忠、大江広元、九条兼実、平貞能、文覚、源行家、三好康信ら合わせて18人のグラフィックが掲載されているが、モノクロページで本来の色合いが分からないのが非常に残念である。これは、どう考えてもカラーページに持って来るべき項目であると思われる。

歴史再現

 「波底の都」に挿入されている歴史イベント集。「兄と弟(150ページ)」、「遷都(151ページ)、「英雄の死(153ページ)」、「朝日将軍(154ページ)」、「富士川の戦い(158ページ)、「倶利伽羅峠(161ページ)」、「鵯越(163ページ)」、「敦盛最後(164ページ)」、「扇の的(165ページ)」の9つがある。イベント出現条件も網羅されており、特に、「富士川の戦い」、「倶利伽羅峠」、「鵯越」に関しては、イベントが起こるポイントまで細かく記載されている。

総合評価 ★★★★★

 本書の最大の美点は、この時代の入門書としても非常によくまとまっていることである。特に「武者の世に」は、単なるゲームの攻略本を越えた情報量があり、頼朝と義経の対立において、義経側の問題点もしっかりと描写している点も高く評価できる。また、「群像」では全武将の略歴が紹介されている点も大きい。最低限の情報とは言え、全ての武将がどのような人物であるかを明らかにしているというのは、『ランペルールハンドブック』のようにモヤモヤとしたものが残らず、良いものである。

 一方、ゲームの攻略本として見た場合、攻略記事は、そつのない作りで面白味は薄いが、攻略本として必要な情報は満たしていると思われる。とは言え、実際にゲームをプレイしてみると疑問に思う点も多数あるため、それについては下記にまとめた(*1)、(*2)。

 ゲームのデータ集として見た場合も、必要な情報は整えられているが、前述のように、あと一歩欲しい情報が足りない印象がある。もっとも、こうしたものを網羅していくと、ページ数が膨大なものとなり、近年の書籍のように複数冊構成になってしまう。これについては、情報の取捨選択として割り切るしかない。

 なお、本書の内容は『蒼き狼と白き雌鹿』シリーズに重なる部分があり、『蒼き狼と白き雌鹿』シリーズの歴史的背景を理解する手助けにもなる。また、当然のことながら両作品に登場する武将もいるため、能力の傾向を比べてみるのも面白い。

*1攻略情報の補足

 ゲーム中では見落としがちであるが、注目したい要素として、第一部では、以下の5点が挙げられる。第1点は「米売」と「米買」の相場は米10に対して金6で固定されており、相場は変動しないということである(87ページ)。また、「米買」と「米売」は「実行武将の不満を高める場合がある(87ページ)」が、武将が自ら実行を願い出ることもあるため、これを利用すれば不満の上昇を抑えることができる。

 第2点は治安度が「40」未満の拠点がある場合、朝廷関係が低下することである(88ページ)。論功行賞において朝廷から官位をもらえる朝廷関係「70」ギリギリの状態だと、朝廷関係の低下によって官位がもらえなくなる場合があるため、特に注意したい。

 第3点は、武将のマスクデータとして「不満度」が設定されており(96ページ)、その上下によって忠誠度が変動することである。『三國志Ⅵ』を先取りしたシステムであるが、「夢」のようなコマンド制限はない。

 第4点は論功行賞は毎年1月と7月と決められており、棟梁が拠点にいることが絶対条件となることである。さらに朝廷関係が「70」以上ある場合、朝廷から官位(このゲームの官位は、武将の動員兵力に直結する)の任命権が与えられる(95ページ)ため、この時期に棟梁が拠点にいないと、貴重な戦力増強の機会を逃すことになる。

 第5点は「二十代の半ばに達さない武将は、まだまだ能力が自然に伸びる余地を残している」ことである(98ページ)。つまり、年齢とともに能力が成長するということである。「群像」を見ると、那須与一の「弓術」は「85」しかないが、これによって最終的には「100」に達することになる。

 第2部では、128ページには戦闘中の「特殊」の「落石」に関する説明がある。これの威力は極めて高く、特に総大将が攻撃を受けると、そのまま総大将が倒され、圧倒的に優勢な状況であっても、逆転されてしまう可能性がある。このことが、義経や義仲などの戦闘能力の高い棟梁を戦場に投入することを難しくしている。

*2個人的経験に基づく補足

 個人的経験に基づく補足として、第一部の93ページでは、捕虜の「歓待」の有効的な活用法として、官位の高い(動員兵の多い)武将を即戦力として活用することを紹介しているが、この手段で登用した武将は忠誠度が低い上に、即座に忠誠度を上げる手段がない(このゲームでは、官位を与えるのが一気に忠誠度を上げる唯一の手段である)ため、他勢力からの引き抜きを警戒する必要がある。

 また、107ページには、序盤の朝廷関係について「少ない財貨をやりくりしてまで献上する必要はまったくない」とあるが、棟梁が無官の場合は、無条件で冠位がもらえることもあるため、無官の棟梁でプレイする場合は、早めに朝廷関係を上昇させた方が良い。また、武将の勲功が官位をもらえるレベルに達してから一気に朝廷関係を上げようとしても、間に合わなければ1回分の論功行賞を無駄にしかねないため、朝廷関係の上昇は早い段階から行った方が良いと思われる。

 第2部では、1つの軍団は1行軍フェイズに1回しか戦闘を行えないという仕様を利用し、囮を出して時間を稼ぐという手段が紹介されている(115ページ)。これは、時間稼ぎとしては確かに有用であるが、戦いに勝利するたびに敵軍団の士気が上がるため、多用は禁物である。

 また、計略の「焼き討ち」について、「戦局を左右するほどの効果はなく(123ページ)」とあるが、平泉に資源と雑兵をため込んだ奥州藤原氏との戦いでは、平泉に対して1ターンに1回しか攻撃できないこともあり、資源を減らし、雑兵の回復を防ぐ手段として有効である。


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