ハンドブック紹介

 

   信長の野望天翔記ハンドブック  


 ●基本データ
 絵巻 天正十年六月
 第一部 戦国史外観
 第二部 乱世御定書
 第三部 軍配目録・1
 第三部 軍配目録・2
 第四部 情報総覧
 読み物とコラム
 総合評価 ★★★★

基本データ

 初版発行は1995年3月22日。ページ数は奥付を含めて192ページ。定価は2000円。本文デザインは有限会社マグラーデザインスタジオ。執筆者は小柳暁子、もりあやめ、弾正ブラザーズ。構成はメインとなる4部と巻頭の「絵巻 天正十年六月」、歴史読み物の「最強の織田軍団」、コラム全6編。本書では初版を参照している。

絵巻 天正十年六月

 3~10ページ。正子公也によるカラー絵巻。なお、正子公也は本書の各部の扉絵も担当している。「本能寺の変」による信長の死、「中国大返し」で風雨の中で問答する秀吉と官兵衛、晴天の中、筒井順慶の援軍を諦める光秀と斎藤利三の対話を経て「山崎の戦い」に至る。物語は漫画的なコマ割りによって展開されるが、台詞などは字幕のように表示されており、字幕映画の一幕を切り取ったような構成になっているのが印象的である。

 余談として、5ページの黒田官兵衛の顔は、続編の『将星録』にそのまま使われている。また、本項の秀吉と光秀の顔も『将星録』の顔グラフィックに大きな影響を与えていると思われる。

第一部 戦国史外観

 11~92ページ。扉絵は「お市」。19項目。このうち3項目はシナリオの解説、残りの16項目は、日本全土を8つのエリア(九州、四国、中国、近畿、東海、北陸、関東、奥羽)に分け、それぞれの地域史と勢力の紹介に2項目ずつ使っており、合わせて19項目となる。今回は、これまでとは違い、九州から東北の順で勢力を紹介している。ちなみに、甲信は東海に含まれる。

 シナリオの解説は、それぞれ見開きの上半分を日本地図、下半分を状況解説に宛てている。今回は、日本地図を指し示す形で全勢力の名前を記載している。また、特にその中から7つの勢力がピックアップされ、当主の顔グラフィックと近況を紹介する。なお、本書には本作の隠しシナリオに関する記述はないが、『マスターブック』で取り扱われている。

 各エリアの解説は、1530~1570年代を中心として1ページ以上を使った解説が行われている。これはエリアごとの歴史の流れを把握するという意味において価値がある。また、本項ではエリアのマップを掲載し、マップを指し示すかたちでエリア内の城の名称を紹介している。本書には城の解説はないが、これは『マスターブック』に城のマップと会わせた解説がある。

 勢力の紹介については、「××(エリア名)制覇への道」という副題がつけられている。内容は地域ごとの攻略が中心である。また、「××(エリア名)産名称八選」として、エリア内の8人の武将がピックアップされている。選出が1つの勢力に偏らないための配慮か、意外な武将が名を連ねている。

 各勢力の紹介は、勢力を代表する当主の顔グラフィック、シナリオごとの勢力の総合データ、勢力の歴史的由来、シナリオごとの初期戦略、代表的な居城のマップから構成される。基本的なつくりは『覇王伝ハンドブック』の大名血風録に近いが、データ表が追加されたことで、より勢力の規模が分かりやすくなっている。また、本書には武将データが掲載されているため、名前が挙がっている武将の能力を確認することができる。

第二部 乱世御定書

 93~104ページ。扉絵は「お寧々」。「『天翔記』の世界(新システムの紹介)」、「興国の時(ゲームスタート直後の情報の確認と整理)」、「攻勢に転ず(軍備の増強)」、「覇道をゆく(勢力の拡大)」の4項目。つまりは、ゲームの基本的な進め方の紹介であり、いずれも要点は図にまとめられている。また、「『天翔記』の世界」以外の3項はそれぞれ第一段階、第二段階、第三段階として連動している。

第三部 軍配目録・1

 105~144ページ。扉絵は「お茶々」。ここからは扉絵もモノクロになってしまっている。「乱世御定書」が大まかなゲームの概要を紹介していたのに対し、本項では個々の要素を解説する。本項では、ゲームに登場する各武将が説明を行うという体裁をとっている。

 本項は「権威(官位と幕府役職・織田信長)」、「勢力(勢力の構造・斎藤道三)」、「地勢(災害・北条氏康)」、「戦場(戦闘のルール・上杉謙信)」、「登用(人材登用・羽柴秀吉)」、「内政(武田信玄)」、「講義(徳川家康)」、「売買(商人との取引・羽柴秀吉)」、「兵科(黒田官兵衛)」、「技能(毛利元就)」、「外交(足利義昭)」、「身分(織田信長)」、「軍団(軍団に対する指示と会見の効果・森蘭丸)」、「披露(塚原卜伝)」の14項目から構成される。ちなみに( )内の武将が解説役である。

 本項では、要点がタイトルの下にまとめられているほか、図や表が効果的に使われており、データ的要素を視覚的に確認しやすくなっている。特に各所で勲功の上昇値が実数で表されているのは便利である。その他にも有力な情報が多く、一通り目を通す価値がある。

 さらに、本項では各文章中にもデータ的に重要な記述がある。このあたりの情報量は『武将風雲録ハンドブック』を髣髴とさせるが、謀反フラグ(「没収」や敵からの「内応」によって発生する裏切りのフラグ)を消すことができる官位の条件のように、別の資料と情報が食い違っている箇所もある。本書では「家宝ならば5等級以上、官位は最下級(107ページ」が必要とあるが、『天翔記事典』には「官位も五位以上(250ページ)」が必要とあり、どちらが正しいのかは現状では不明である。

第三部 軍配目録・2
 その他の重要な要素として、戦闘においては、「士気」が攻撃力、「訓練」が防御力に影響する点が挙げられる(112ページ)。本作の「訓練」はコマンドの「訓練」以外にも実戦を経ることで200まで上げることができるが、これは防御力に強い影響を与えているということである。また、「高地からの射撃や突撃はより効果が高い(113ページ)」という。いまいち具体性に欠けるが、本丸、櫓からの射撃や山地からの突撃を示しているのではないかと思われる。

 軍備面では「鉄砲・馬産地」の仕様に注目したい。これらの属性を持つ城を保有している勢力は、それぞれを安く仕入れることができる(125ページ)。ただし、その保有フラグは勢力ごとに管理されているため、安く買った鉄砲や馬を他の城で高く売るというようなことはできない。、また、これらの属性を持つ城では「徴兵」の際に兵力の20%の騎馬や鉄砲を無条件で入手することができるが、その特典は属性を持つ城でのみ適用される。

 内政面においては、119ページの「内政実行表」に注目したい。「内政」に「政治」が大きな影響を与えるのは当然であるが、「政治」だけが反映されるのは「開墾」だけであり、「商業」には「智謀」、「築城」には「智謀」と「野望」、「施し」には「魅力」も影響を与えるのである。また、「取引」において技能の「弁舌」を持つ武将は「購入」は3割引き、「売却」は2割増で取引を行うことができる(125ページ)。成功率は魅力が影響するが、友好度が高いほど交渉は決裂しやすくなるという。

 武将の能力については、51歳から「戦闘」、61歳から「智謀」、71歳からは「政治」が低下する点に注意する必要がある。また、「教育」の「講義」では、コマンドに該当する能力だけでなく、能力の平均値の高さが必要(121ページ)であり、「披露」でゲストキャラが獲得した家宝は、再び商人から購入することができる。そのため、ゲストが優勝しても家宝が登場しなくなるということはなく、気軽に「披露」を行うことができる。

 災害などについては、本作でも一揆の発生条件は「民忠」が50以下の時であることに注意したい(110ページ)。これは、最優先で行うべきことの1つの指針になると思われる。また、本作では「豊作」になると「民忠」が8上昇するというボーナスがある(110ページ)。

第四部 情報総覧

 145~191ページ。扉絵は「細川忠興夫人ガラシャ」。「武将データ一覧」、「城データ一覧」、「家宝目録」、「コマンド総覧」の4項目に分かれ、それぞれのデータを全て紹介している。「武将データ一覧」は、全武将の各能力の上限値と魅力、野望、それぞれのシナリオの能力値と所属が公開されている。1人分の武将の情報は1ページにまとめられているため、かなり煩雑な印象を受けるが、情報量とページ数の関係を考えれば、仕方のないことであると言える。むしろ、しっかりとデータを挿入したことは評価されるべきである。

 「城データ一覧」はシナリオごとに分かれており、所有勢力と各種のデータ、城の特性がまとめられている。これも1つの城のデータは1ページに収められ、データの詰め込み過ぎの感はあるが、こういうデータをまとめておいてくれること自体がありがたい。

 「家宝目録」は、等級と効果のみでシナリオごとの所有者に関する記述がないのが難点である。「コマンド総覧」は、行動力の記述はあるが、「軍配目録」には記載のあった勲功の獲得量は省かれている。個人的な印象として、これまで数十ページを使って解説することさえあったコマンドの解説を表にまとめ、2ページに抑えたのは高く評価できる。

読み物とコラム

 読み物は「最強の織田軍団~天下布武へ邁進せよ~(142~144ページ)」。本作の軍団制のモデルとなった信長の軍団制を解説する。94~95ページにも記述はあるが、ある一方面を家臣に一任するというモデル自体は、他の大名家でも行っているが、信長の軍団制は、軍団長に強大な権限を与え、方針に対する手段は完全に一任するという点において一線を画している。しかし、人事権は完全に信長が握っており、それゆえに軍団制は中央集権制の萌芽と言えるものであった。

 コラムのうち、「乱世に舞う一輪の花」はゲーム中の姫と姫武将の解説であるが、姫武将登場の条件はぼかされている。ちなみに、姫は4人まで持つことができるが、姫が0人の時に姫が産まれる可能性は10%弱であり、姫が産まれるたびに新たな姫が登場する確率は減っていくという。

 その他のコラムは、基本的にゲームの各要素の歴史的背景をピックアップしたかたちになっている。「戦国武将と鷹狩(114~115ページ)」、「茶の湯と乱世(140~141ページ)」は「講義」の「鷹狩」と「茶会」、「戦国最速の部隊(121~122ページ)」は「講義」の「馬術」と兵科の「騎馬」、「剣豪と御前試合(133ページ)」は職業の「剣豪」と「講義」の「披露」、「女たちの戦国(132ページ)」は姫と姫武将に結びつけることができる。

総合評価 ★★★★

 良くも悪くも情報の取捨選択が徹底した書籍である。必要なデータは、ほぼ本書内に収めらており、ゲーム攻略のための情報は、本書1冊で事足りる。また、勢力情報をエリアごとに分け、エリアごとの勢力興亡史を紹介しているが、『信長の野望』シリーズの「ハンドブック」として、ある程度の大局的かつ連続的な歴史の流れを取り扱っているのは『全国版ハンドブック』以来久々である。

 一方、本書では、これまでの「ハンドブック」で見られたQ&A、城の歴史的情報、プレイレポート、こだわりプレイの勧めといった要素は完全に切り捨てられている。しかし、これらは『天翔記マスターブック』に掲載されており、情報を分割することで1冊の書籍としての情報価値を高めたと言える。


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