ハンドブック紹介

 

   信長の野望覇王伝ハンドブック  


 ●基本データ
 第一部 立国の礎
 第二部 覇王の奥義・攻略問答
 第二部 覇王の奥義・織田家家臣団会議
 第二部 覇王の奥義・実戦レポート
 戦国家臣団の形成
 第三部 戦国名城図譜
 第四部 大名血風録
 ●城データ一覧
 総合評価 ★★★

基本データ

 初版の発行は1993年4月10日。ページ数は奥付を含めて192ページ。定価は2000円。デザインは水谷均、執筆は神保郁雄、一色孝典、英保未紀。本項では初版を参照している。4ページの「内容概略」によると、基本構成の4部に加えて歴史読み物の「戦国家臣団の形成」と「城データ一覧」から本書は成り立っている。

第一部 立国の礎

 5~32ページ。本書の各部の扉には兜の写真が掲載されている。ただし、説明はないため、それがどのような由来を持つ者であるかは不明である。本部は「シナリオ解説」と「コマンド解説」の2つの項目から成り立ち、両項の下には、それぞれ小見出しがある。

 「シナリオ解説」は「シナリオ1 1551年 信長出世編」、「シナリオ2、1568年 天下布武編」、「シナリオ3 1582年 平安楽土編」の3編から構成される。それぞれに近況の説明とゲームスタート年前後の年表、日本地図による勢力分布と有力勢力の紹介がある。また、特に大きな事件3つから4つを取り上げ、記事に合わせたゲーム中の戦闘画面とともに見開きページに掲載している。

 「コマンド解説」は「内政」、「軍事」、「外交」、「調略・自国」、「人事」、「論功行賞」、「戦闘」の7項目。「調略・自国」は意味が分かりにくいが、「調略と自国の情報」のことである。基本的には文字通りコマンドの解説に徹しており、見るべきものは少ない。

 ただし、「論功行賞」において「1」の加増で「10」の勲功を消せること(28ページ)、「感状」の発行で「30」の勲功を消せること(29ページ)は、効率的に論功行賞を行うために抑えておいた方が良いかもしれない。特に本作では、武将に知行を与えると収入が減るうえ、武将が知行を持つこと自体には何の意味もないため、知行を与えるよりも、こまめに「感状」を発行して勲功の上昇を抑えた方が良いと思われる。

第二部 覇王の奥義・攻略問答

 33~72ページ。「攻略問答」、「織田家家臣団会議」、「実戦レポート」の3項目。「攻略問答」は9つの疑問に回答するかたちで本作のシステムを解説する。このうち、4つめの「家宝を活用するには」は「家宝一覧」、9つめの「征夷大将軍になるには?」は「官位相当表」が附随する。なお、「家宝一覧」は基本データはそろっているが、解説はない。「官位相当表」に至っては、位階と官位の名称しかない。これらの詳細は「事典」に掲載されている。

 重要な点としては、本作では忠誠度を確認することができないが、「気合」の回復度合いから忠誠度を推測できる(34ページ)こと、勲功が100まで貯まると忠誠度が低下する(35ページ)ことなどが挙げられる。また、パソコン版では、一部のコマンドに対する気合の入れ方を入力する(39ページ)ことができるが、これは一部のコンシューマ版では不可能である。

 また、本作の特色として、地域ごとの気候が戦場に影響を与えるというシステムがある(44ページ)。北海道、東北、北陸、山陰東部の「亜寒帯紀行」は、雪によって冬の士気が下がりやすく、火計の成功率が低下する。一方、陸前と陸中から美濃までの内陸部は「高山型気候」であり、冬は乾燥によって火計の成功率が上昇する。

 近畿中部から瀬戸内海は「地中海型気候」であり、夏は火計の成功率は高まるが紀伊半島、四国南部、山陰西部、北東を除いた九州全土は「亜熱帯気候」であり、夏には兵の士気が下がりやすい。本作では、攻城戦における火計が大きな働きをするため、火計の成功率が低い気候と季節の組み合わせで攻城戦を行った場合は、「工作」の「潜入」を主力にした方が効率的と言えるかもしれない。 

第二部 覇王の奥義・織田家家臣団会議

 「織田家家臣団会議」は、信長と家臣団の軍議という体裁で3つのシナリオの織田家の初期戦略を紹介する。シナリオ1の「金山奪って大国めざせ」は、内政を勧める平手政秀と速攻で北畠家の攻略を進言する柴田勝家に対し、しゃしゃり出てきた秀吉が今川家と武田家の攻略を提案、今川家は武将の能力の差で押しつぶし、武田家に対しては同盟国の斎藤家の助力を仰ぐことで優勢を確保、彼らの持つ金山を奪い、財政的優位に立つことを提案する。

 シナリオ2の「鉄砲買って天下を狙う」では、シナリオ1の秀吉の案を模倣する勝家に対し、明智光秀は近畿の同盟関係を利用した畿内制覇を提案、秀吉は、この案をさらに一歩推し進め、鉄砲生産城(鉄砲が相場の半額で買える)の堺の優先的制圧を進言する。

 「シナリオ3」の「果報は安土城で待て」では、光秀が織田家の圧倒的優勢を活かして戦力を山陰、山陽、四国、北陸、中部の5ヵ所に整理、そのまま5方向に同時侵攻し、勢力を拡大していくという作戦を提示する。さらに光秀は、自らが山陰方面の担当となることをを申し出るが、秀吉は光秀に信長直属の軍師として朝廷工作などを助言するように勧める。

 「腹を切って信長を諌めようとする政秀」、「愚痴を聞き咎められ、『今は』不問に処される林通勝」、「信長からの一字拝領を『これ以上名前をつぎはぎにしたくない』という理由で断る秀吉」、「信長に京都見物を勧め、本能寺に宿を手配しようとする光秀」など、史実の小ネタを踏まえた会話形式の文章が面白い。個人的には、本書においてもっとも価値のある部分の1つであると感じる。また、ぼかしてはいるが、「ハンドブック」シリーズにおいて『本能寺の変』イベントに関する描写が登場するのは本書がはじめてである。

●第二部 覇王の奥義・実戦レポート

 実戦レポートのタイトルは「仏敵信長を倒せ!本願寺光教激闘録」。シナリオ1の本願寺当主である光教の1人称視点によるプレイレポートである。ちなみに、なぜシナリオ1なのかというと、信長が父の葬儀の際、焼香を父の位牌に投げつけるという所業を聞いた光教が「仏に対してなんたる振舞い!こいつは将来、大敵になると見た!よって我らはこの仏敵の芽を摘みとらねばならない(68ページ)」と感じたためである。

 本作の本願寺は加賀に領土があり、北陸一帯を制していくのがセオリーであると思われるが、今回は畠山家を滅ぼした後は越中→飛騨→美濃→尾張と一気に南下、尾張から三河、南近江、伊勢にまで領土を拡張していた信長との決着をつけている。

 戦略的に見た場合、越中では神保氏を完全に滅ぼさず、東の長尾家との緩衝地帯として残している点が目を引く。また、本作でプレイヤーも使えるようになった一向一揆を何度か使用しているが、鎮圧されることも多く、あまり有用とは言えないようである。その他には、雑兵を入れると兵力は増えるが訓練度や士気が激減するため、足軽隊だけの部隊で戦っている点も重要である。

戦国家臣団の形成

 73~80ページ。歴史読み物。本作の新要素である「知行」と「論功行賞」の歴史的背景を扱う。鎌倉時代の「御恩と奉公」による知行の関係は、室町時代の国人層の形成によってバランスが崩れた。国人層に対処できなかった大名は戦国時代を生き抜くことができず、彼らに取って代わられる国人もいた。

 ほとんどの大名は、彼らと妥協する他なかったが、信長は検地を行い、知行を整理することで、他の大名より一歩抜きんでることができた。このことから、「本能寺の変」の一因を、近畿の国人衆にして光秀の有力な勢力基盤でもある幕府奉公衆の反発に求める説もある。

 一方、本作の「論功行賞」における「一字拝領」、「叙任」は、現実において何ら意味をなさない虚名であるばかりか、史実の「叙任」は、朝廷から正式な認可を受けていない官職ですら家臣には喜ばれた。信長は、こうした風潮を利用し、茶器や茶会に知行と同様の価値を与えることに成功した。これにより、諸大名は信長に茶器を送って友好を求め、家臣たちは茶器や茶会に一喜一憂することとなった。ここでは、こうした風潮を「信長の巧みな人心操作(80ページ)」と評価する。

第三部 戦国名城図譜

 81~128ページ。本作に登場する173の城の紹介である。全ての城の位置関係が1国分の地図で表され、城グラフィックも掲載されているが、歴史的説明のある城は21に留まる。また、城の位置関係は国ごとに完全に分断されており、全体図のようなものもないため、隣の国のどの城とつながっているのかが分かりにくい。さらに、本作は前作までとは違い、城の中に入って戦うという概念がないため、城マップの価値は極めて低いものとなっている。こうしたことから、本項の価値はあまり高いとは言えないと思われる。

 なお、本作には特定のルートで野戦を行うと前作と同じく「古戦場」が固有のマップとして登場する。本項の地図の部分にも、それを示す記号が記されているが、「古戦場」自体は本書のどこにも解説がない。

第四部 大名血風録

 129~160ページ。本作に登場する55の大名家を紹介する。大名家は原則的に東北から九州までの並び順であり、それぞれに大名家の由来、ゲーム中の国力や軍事力とシナリオごとの有力武将や初期戦略が掲載されている。

 本項には、有力な武将の高い能力が具体的に記載されており、なぜその武将が有力であるのかが分かるようになっている。しかし、本書には総合的な武将データがないため、ここで部分的に能力が明かされている武将以外の武将の能力を本書で確認することはできない。これは『戦国群雄伝ハンドブック』のシナリオ2の武将に対する情報の不備と同じく、大きな問題点である。

 また、本項では「異色武将列伝」として、22人の武将がピックアップされている。忍者、豪傑、剣豪、僧侶、茶人など、その顔触れは確かに「異色」と言える。しかし、武将データは掲載されていないため、史実の「異色」振りは分かってもゲームにおける各武将の「異色」振りは分かりにくい。ちなみに、剣豪や忍者、僧侶などは、得意分野と苦手分野がはっきりと分かれており、ゲーム的にも「異色」と言えるが、本作では「教養」がなくなってしまったため、茶人たちは凡将扱いなのが悲しい。

城データ一覧

 161~191ページ。本項は、巻末から逆開きになっており、蝦夷から薩摩までの国順に各城のデータが掲載されている。各城のデータの中には、シナリオごとのデータが組み込まれており、シナリオごとの数値の相違が一目でわかるようになっている。また、城に属している武将の名前も羅列されているが、前述の通り、本書には武将データがないため、武将の能力を確認することはできない。ちなみに、ここでは城主の名前は省略されているため、この部分が空白になっている城は、城主しかいないことを意味している。

総合評価 ★★★

 個人的な印象として、本書は「織田家家臣団会議」の面白さと「大名血風録」の情報量に価値がある。また、ゲームシステムの源流としての「戦国家臣団の形成」も興味深く、「攻略問答」もゲームの攻略本であることを考慮すれば有用である。

 一方、「立国の礎」はコマンド解説に留まり、「戦国名城図譜」と「城データ一覧」は、1つにまとめることができたのではないかと考えられる。このあたりもマイナス要素であるが、最大の問題点は武将データが掲載されていないことにある。

 つまり、「城データ一覧」の武将の能力を確認しようとした場合、本書以外の手段(ゲームを起動する、別の書籍を参照する、パソコンで検索するなど)を利用しなければならないため、二度手間になってしまうのである。情報量の増加から、データが複数冊の書籍に分散してしまうのは仕方がないにしても、せめてゲーム的な情報は一冊にまとめるべきであると思われる。


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