ハンドブック紹介

 

   提督の決断 ハンドブック 第3部 戦史再録  


日米交渉決裂

 このシナリオだけは、歴史的背景の解説だけで、ゲーム内のシチュエーションについては触れられていない。これは、第2部で触れられているためであると思われる。主要な情報のうち、日本軍の艦隊は43ページ、所有基地は47ページ、連合軍の艦隊は59ページに掲載されている。



●中国・仏印からの全面撤退(70ページ)

 日米開戦の主要因の1つとなった「ハル・ノート」における日本への要求の1つ。本項では、68〜70ページにかけて日米の対立と海戦に至るまでの状況を説明しており、その中で日本の仏印進駐についても触れられているが、日中戦争については全く解説がない。歴史的背景を知らずに本項を読むと、ここで唐突に中国が登場し、戸惑うことになるのではないかと思われる。



しかしまだ真珠湾内には、
  燃料タンクやドッグなどの重要な軍港施設が
  無傷のまま残っていた(73ページ)。

 真珠湾攻撃の徹底論に対して疑問に思うことは、仮に港湾施設や石油タンクを破壊したとして、その復旧までにどのくらいの月日を必要とするかということである。特に石油タンクに関しては、すぐにアメリカ本国からの輸送が行われることが考えられるため、あまり意味がないのではないかと思えてならない。

 その他の港湾施設の復旧にかかる時間に関しては、手持ちの書籍やパソコンでの検索結果では妥当な情報を得られなかったため、何とも言えない。しかし、珊瑚海海戦でヨークタウンが損傷した際、修理に90日必要なところを、応急的処置によって3日で戦線に復帰させたことを考慮するならば、かなりの短期間で最低限の機能を復旧させられたのではないかと思われる。

 また、仮に施設の復旧までに相当の時間がかかったとしても、工作艦などを投入することで、その代用を果たすことができると考えられるため、港湾施設を破壊したとしても、それが戦争に重大な影響を及ぼせるとは思えないのである。

 その効果を決定的なものとするためには、真珠湾を目指す工作艦や補給船、輸送船などを沈め続ける必要があると思われるが、敵地のど真ん中でそれを続けるのは、潜水艦であっても不可能であると思われる。



●加えてこの日は米空母がすべて出港していたため、
  これらも攻撃することができなかった(73ページ)


 本項や157〜164ページの「仮想戦記」、210ページの南雲忠一の略歴などでは、上記の事情や空母の件から、まるで真珠湾攻撃が失敗であったかのように書かれている。しかし、そもそも南雲艦隊は、空母と戦艦を撃滅するように司令部から命じられており、基地内にいなかった空母(*)はどうしようもないとしても、果たすべき目的は果たしているのである。

 また、結果的に目論見は外れたとはいえ、山本は短期決戦(*)を見込んでいたことを忘れてはならない。それを考慮するならば、軍事施設よりも直接的な敵艦隊の撃滅を優先させたのも当然である。軍事施設が残っていよういがいまいと、それを利用する軍艦がなければ、何ら問題はないからである。

 本項などにおいて取り上げられる批判は、「戦争の長期化」という山本の想定を超えた現実から、逆算的に真珠湾攻撃の成果を失敗として捉えているように思われる。しかし、それならば第一に問題視されるべきは山本の戦略眼であり、その戦略眼に基づいた作戦を完遂した南雲ではないということになる。



三川軍一(88ページ)

 第一次ソロモン海戦を指揮した提督。本作には登場せず、『提督の決断U』から登場する。本作には艦長として戦死した吉川潔、空母攻撃隊隊長の友長丈市など、明らかに提督ではない人物が登場しているが、彼らを出すくらいであれば、三川を出した方が良かったのではないかと思われる。



●にもかかわらず、本命の輸送船団攻撃は中止され、
  敵軍の揚陸作業を阻止することはできなかった(88ページ)


 本書における第一次ソロモン海戦の評。「にもかかわらず」とは、三川艦隊がアメリカ軍輸送部隊を護衛していた重巡4隻を撃沈し、輸送船団を無防備にしたにもかかわらず、輸送船団を残して撤収したことを示す。

 しかし、実際のところ、この輸送船団は三川艦隊の接近を知って物資の揚陸を中止し、撤収していたという。つまり、輸送艦隊を攻撃していなくても、三川らのあずかり知らぬところで、彼らは最低限の目的を果たしていたことになる。

 また、このことをから逆算すれば、三川艦隊が輸送船撃滅の任務を継続していたならば、必然的に敵勢力圏内の奥地に入り込むことになる。最悪の場合、そこで夜明けを迎え、連合軍に袋叩きにされていた可能性さえある。こうしたことを考慮するならば、攻撃を切り上げ、早い段階で撤収したことは、必ずしも間違いであるとは思えないのである。
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