三国志5 三国志V 三國志5 三國志V

 ハンドブック紹介

 

   三國志Xハンドブック  


 ●基本データ
 祝!『三國志』十周年
 第一章・三國志概論
 第二章・経世済民論・1(内政・人事・特殊・アイテム
 第二章・経世済民論・2(登用)
 第三章・出師必勝論・1(外交・軍備・兵器)
 第三章・出師必勝論・2(計略)
 第三章・出師必勝論・3(地形効果)
 第四章・戦場不敗論
 第五章・情報総覧
 歴史読み物
 兵法家列伝
 総合評価 ★★★★★

基本データ

 初版の発行は1996年3月6日。ページ数は奥付と広告を含めて192ページであり、『三國志Wハンドブック』よりもページ数は減少している。定価は2000円、本文デザインは水谷均、原稿執筆は金子隆、近藤明夫、はせべゆたか、村田蔵六、本文イラストは岩田健太郎と森潤二。なお、岩田健太郎は各章の扉絵を担当している。目次によると、本書は5つの部がメインとなる。それ以外には「祝!『三國志』十周年」、歴史読み物2編、「兵法家列伝」5編などがある。

祝!『三國志』十周年

 2〜3ページ。『三國志X』の発売年が『三國志』シリーズの10周年にあたることから、これまでのシリーズの軌跡を振り返る。ここでは各ソフトのパッケージと簡単な解説の他、「主要武将の変遷」として、歴代作品における劉備、曹操、孫権、諸葛亮、周瑜、司馬懿ら6人のデータが紹介されている。

第一章・三國志概論

 5〜62ページ。扉絵は『三国志演義』の第5回より「関羽対呂布」。メインテーマは各シナリオの紹介である。また、それ以外に正史としての『三國志』と『三国志演義』の違いを解説する「改めて問う、『三國志』とは?」と武将の対談形式で本作の割とどうでもよい部分を紹介する「初登場君主対談」、「弱小四君主会談」、「異民族君主鼎談」の3編がある。

 各シナリオの紹介については、「時代背景」の項に、そのシナリオが『三国志演義』のどの回数に対応するのかという記述が加えられた。ちなみに、シナリオ1(184年)は「第1回」、シナリオ2(189年)」は「第5回」、シナリオ3(196年)は「第14回」、シナリオ4(201年)は「第31回」、シナリオ5(208年)は「第49回」、シナリオ6(219年)は「第73回」、シナリオ7(234年)は「第105回」となる。

 今回、有力な在野武将や引き抜きやすい武将は各シナリオごとに「FA武将をねらえ!」としてまとめられ、推奨君主についても「おすすめ君主はこれだ!!」の項で初級者、中級者、上級者向けに分けた君主が紹介されている。また、各勢力の解説では、新君主も史実の君主に混じって紹介されており、推奨される領土で開始した場合を想定した初期戦略が掲載されている。

 さらに、今回は、これまでになくデータ面が強化されており、領土数や武将数の他、全ての勢力における領内の「金」と「兵糧」の他、「開発」と「商業」の合計値や総兵力などが掲載されている。また、特に有力な勢力に関しては、武将の「武力」、「知力」、「政治」などの平均データまでもが明らかにされており、そこまでする必要があったのかと思うほどの情報量である。

 3つの対談は『三國志Wハンドブック』の「実戦講座」や「遊戯ノ章」と同じ系統のギャグ調の文体である。ちなみに、「弱小四君主会談(51ページ)」は『三國志Wハンドブック』の「がんばれカマせ犬(98〜99ページ)」の続編にあたる。また、「初登場君主対談」で何進は初登場ということになっているが、『三國志V』の一部機種で登場済みである。

第二章・経世済民論・1(内政・人事・特殊・アイテム)

 63〜84ページ。扉絵は『三国志演義』の第58回より「馬超対許」。本書では『三國志Wハンドブック』と同じく、武将が各項の解説を行うという体裁をとっており、本項では、5項目で名声、内政、人事、特殊コマンド、アイテムを解説する。

 本項では、まず「巡察による民忠誠度と名声の変化(65ページ)」に注目したい。この表には、それぞれのイベントにおける選択肢と、選択肢を選んだ場合の「名声」と「民忠誠度」の変動、さらには、それぞれのコマンドの結果とランダム性を伴うものは、そのパーセンテージまでもが記載されている。この表に限らず、本書はデータの数値部分の公表が多く、ゲームの攻略本としては今までにない価値がある。

 内政については、本作では「政治」は「開発」にしか影響を与えず、「商業」は「魅力」、「治水」は「知力」、「築城」は「武力」の影響を受ける点に注意する必要がある。また、本作では「民忠誠度」が「60」以上の場合、「内政」の効果が3倍になることがあり、逆にそれ未満だと、「内政」の効果が3分の1になることもあるという。そのため、今まで以上に民忠誠度の上昇は重要であると言える。

 アイテムに関しては、グラフィック、各シナリオごとの所有者、上昇する能力と付与される特技、解説が載っている。また、本作の書物は、それぞれの固定値から武将の「知力」や「政治力」を差し引いた数値をアイテムごとの固定値で割ったぶんだけ上昇する。つまり、「知力」や「政治力」の低い武将ほど、アイテムによる上昇値も高くなるのである。

第二章・経世済民論・2(登用) 

 人材登用に関しても、「『登用』・『作敵』が通用しない武将(70ページ)」として、表にまとめられている。異常な頻度でCPUが引き抜きを行ってくる本作では、特に「現役武将の『登用』(要するに引き抜き)」が重要になる。

 ここでは、君主の親族、忠誠度が「100」の武将、「作敵」済みの武将、埋伏武将、特別武将の他、「忠誠」が「90」以上で君主との相性差が「3」以内の武将も引き抜かれない武将に挙げられている。また、「作敵」が効かない武将には「忠誠」が「95」以上で「義理」が「10」以上の武将も含まれている。

 『三國志』シリーズの「ハンドブック」において、マスクデータの効能がはじめて具体的に明かされたのは、これが初めてである。その意味において、この表の持つ意味は極めて大きい。

 さらに本書では、「埋伏」についても、これまでになく細かく紹介されている(72ページ)。まず、能力は低い方が登用される確率が高まり、全能力が「75」未満の武将では成功率が50%となる。「二人以上の武将がすでに埋伏している場合は登用されない」とあるのは、おそらく「1勢力につき2人」ということである思われる。また、89ページには、埋伏武将のいる都市では計略の成功率が10%程度上昇するという情報が掲載されている。

第三章・出師必勝論・1(外交・軍備・兵器)

 85〜96ページ。扉絵は『三国志演義』の第71回より「夏侯淵を討ち取る黄忠」。本章以降の扉絵はモノクロとなる。本項は4項で戦争準備、計略、外交、兵器の共同開発を解説する。

 本項は、特に外交関連の内部データが詳細に解説されている。例えば「同盟」の場合、相手が自勢力を敵視している場合と敵対心が「81」以上の場合は絶対に成功しない。一方、総合的な軍事力が相手の2倍であり、隣接している敵対心が「10」未満の勢力に対し、「政治」が「80」以上の武将が12か月未満の同盟を求めた場合は、「政治」の3分の1パーセントの確率で無条件で交渉がまとまることがある。

 また、80%の確率で成功する条件としては、(相手の自勢力に対する敵対心)×(同盟期間)×3+2000以上の金を提示することであるという。もちろん、他の外交コマンドも詳細な情報が記載されており、これまでの「ハンドブック」シリーズと比較すると、情報開示の水準は極めて高い。

 軍備計画では、「募兵の特徴」と「徴兵の特徴」として(87ページ)、それぞれのメリットとデメリットがデータ面から細かく記載されている。これらに比べると兵器の情報(94〜96ページ)は強化される陣形のデータ、開発費、開発期間、歴史的背景の開発に留められ、やや物足りない。

 なお、兵器による具体的な上昇値については本書の「全陣形詳解(137〜144ページ)」に解説がある。また、その上昇値が実際にどれだけの効果をもたらすかということについては『三國志Xマスターブック』の58ページの表に検証結果が掲載されている。これによると、同陣形で装備を持つ武将と持たない武将が正面から戦闘を行った場合、攻撃1回につき3〜5%のダメージの増加、軽減効果が出るようである。

第三章・出師必勝論・2(計略)

 計略についても「各計略の条件一覧」として、これまでよりもはるかに細かい条件が列挙されている。本作において非常に煩わしい「流言」についても「『流言』の効果(88ページ)」として成功パターンが掲載されているが、肝心の成功条件については記載がない。

 しかし、「流言」で「忠誠」が低下する武将は、必ず「忠誠」が最も低い武将であると決められている。そして、上記の通り、君主の血縁武将と「忠誠」が「100」の武将は引き抜くことができない。そのため、君主の血縁武将の「忠誠」を最も低い状態にしておき、他の武将の「忠誠」を「100」にしておけば、「流言」は引き抜くことのできない血縁武将に集中することになり、他の武将の引き抜きを防ぐことができる。インターネット上では、この手法が「避雷針」と呼ばれて普及しているようである。

 また、「駆虎」の成功しない条件の中にマスクデータの「義理」が「13」以上の場合と「忠誠」が「90」以上で「義理」が「10」以上の武将が含まれており、ここでもマスクデータの存在意義を確認することができる。

第三章・出師必勝論・3(地形効果)

 「計略の」「扇動」と「工作」に関連するかたちで、戦場の地形効果と機動力も本項に記述がある(90ページ)。これらに最も関連するものは城の防御効果であるが、これは「城防御÷70+16」という計算式で求められる。

 ただし、水陣は城防御効果が半減する(上記の計算式を2で割ったものが防御効果となる)ため、これらに籠るときは平地型か山岳型の方が圧倒的に有利である。さらに水陣は関でも防御効果が半減するため、やはり水陣は陸戦では活用しにくいということになる。

 また、地形効果については、山岳型陣形は森でも強く、水陣は湿地でも強いことが明らかにされている。つまり、平地型陣形は平地と道、山岳型陣形は森と山、水陣は水と湿地に強く、移動の際にも、これらの地形において消費する機動力は少なくなるのである。

 さらに、本書では地形効果について、地形効果の高い方が「1」の差ごとに3%の防御修正を受けることが明記されている。そのため、山で「4」の地形効果を受ける平地型陣形と「12」の地形効果を受ける山岳型陣形が交戦した場合、山岳型陣形は24%の防御修正を受けることになる。これにより、各陣形を、それぞれの適応地形で使う必然性が生まれることになる。

 これまで「ハンドブック」シリーズでも、地形効果の高低自体は紹介されてきたが、その具体的な効果について踏み込んだのは、やはり本書がはじめてである。これまでの項目と同じく、その情報的価値は非常に高いと言える。

第四章・戦場不敗論

 97〜150ページ。扉絵は『三国志演義』の第63回より「巴西に臨む張飛」。本項では4項目で戦闘の概要、特技、地勢、陣形を解説する。特技に関しては、成功率に影響を与えるステータス、「天変」、「風変」などの成功率などのパーセンテージ、ダメージ系特技のダメージ率などの解説がある。

 見落としがちな点としては、「火計」や「同討」はかける側の「訓練」も影響を与える点、「混乱」はかけられる側の「訓練」や「士気」も判定要素となる点などがある。また、「火矢」は、火がつかなくても単純に弓矢の25%増しのダメージを与えることができる。

 戦場については、シナリオごとの所有者、歴史的背景の解説、マップの写真、キャプションによる地形の解説があり、1ページで2枚のマップの解説を行うシンプルなものである。また、最初のページ(113ページ)に全体マップを13州に分けた図が掲載されているが、ここには都市名がないため、各マップが全体マップのどこに相当するのかを確認することはできない。

 陣形は、最初のページ(137ページ)で「陣形早見表」として全陣形の基本データの一覧を紹介した後、1ページで2つの陣形の詳細を解説する。ここでは能力的特色と陣形固有の能力、兵器開発によって上昇する能力の数値などが紹介されているが、側面からの攻撃力は30%増し、後方からでは50%増しという重要な情報は、「衝軛(141ページ」の解説に紛れてしまっている。その他、陣形の地形適正の持つ意味や、消費機動力については、前述の通り、90ページに記述がある。

第五章・情報総覧

 151〜189ページ。扉絵は『三国志演義』の第41回より「阿斗を抱く趙雲」。本項は2項目で登場武将と都市のデータを解説する。武将データは基本能力値、シナリオごとの所在地と所属勢力、所有陣形と技能を見開きで掲載している。背表紙側の部分が空白になっており、無理にページを開かなくても全てのデータが見られる点は『三國志Wハンドブック』と同じである。

 都市データは1ページに収められ、君主と太守、人口、所属武将数の他は各種の内政データが掲載されている。しかし、「開発と「商業」は、都市ごとの最大値とゲームスタート時の数値が離れており、やや比較しにくくなっている。また、今回は商人の常駐都市を「○」で表す項目がある。

歴史読み物

 本書の「歴史読み物」は「後漢末知識人の『名声』について(80〜83ページ)」と「『三国志』の陣形について(144〜149ページ)」の2編であり、本作の新要素である「名声」と「陣形」の歴史的背景を解説する者である。

 「後漢末知識人の『名声』について」は、後漢末知識人の人物評と「党錮の禁」、潁川知識人グループの台頭、「九品官人法」の制定などを中心として、史実における「名声」の役割を解説する。しかし、名声は、あくまでも知識人同士の理想的人物を論じたものに過ぎず、張や劉表などは高い評価を受けた名士であるが、乱世においては大きな役割を果たすことができなかったこともまた事実である。

 「『三国志』の陣形について」も、本作の新要素である「陣形」の歴史的背景の解説になっている。本作には「無陣」を含めた13の陣形が登場するが、これから「水陣」を除いた12の陣形のうち、中国由来のものは「錐行」、「雁行」、「鈎行」、「箕形」、「偃月」の5つ、アレンジと言える「方円」を含めても6つであり、残りは日本由来であるという。

 その他にも、本項では『三国志演義』に登場した陣形などについても触れているが、史実において陣形が確認できる戦いは「界橋の戦い」を除いてほとんど見られないという。結局のところ、陣形もまた平時の空論としての意味合いが強く、そこから史実性を見出そうとするべきではないと言える。

 つまり、「名声」にせよ「陣形」にせよ、それらが実際に果たした歴史的な役割は、あまり大きいとは言えないのである。本作では、これらが大きな役割を果たしているが、それは、あくまでもゲーム的な解釈と割り切り、ゲームと史実を切り離して楽しむべき部分であると思われる。

兵法家列伝

 三国時代以前の兵法家として、孫武(84ページ)、孫(150ページ)、太公望呂尚(162ページ)、呉起(172ページ)、墨子(190ページ)ら5人の略歴を紹介する。孫武と孫については、文中で『三国志』との関連性が語られているが、この2人以外は、直接的に『三国志』に関係した逸話は出てこない。

 一応、『三国志演義』などでは、呉起は孫武、孫に匹敵する兵法家、呂尚は理想的な補佐役として名前が取り上げられることもあるが、墨子は、基本的に『三国志』との関連性は低い。彼を取り上げるのであれば、他にもっと適した人物がいるように思われる。

総合評価 ★★★★★

 本書は、これまでになく内部計算式や内部データなどが公開されており、「ゲームの攻略」という観点から見るならば、極めて優秀である。特に、これまであいまいにされてきた地形効果や「埋伏」の意義、わずかではあるが、マスクデータの具体的な効能が明らかにされた点は、非常に高く評価できる。

 しかし、『三國志Xマスターブック』と情報が分割されているためか、エンターテイメント性は『三國志Wハンドブック』に劣り、総合的な情報量も、「三國志Vハンドブック」などにはおよばない。さらには読み物としての価値も限定的なものに留まっており、ゲーム抜きで本書だけを楽しめるかと言えば疑問が残る。


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