はじめに

概要

「あなた自身の英雄伝説をつくるために」というテーマで本書のコンセプトを解説する。そのテーマ上、「歴史のif」に対する思い入れが熱く語らられるのは良いが、その引き合いとして、綿密に歴史を検証していくことを「味気ない」と切り捨てるのは、個人的な感性としては納得がいかない。



具体的な事実の積み上げと客観的な分析、ここからはじめて真理が究明できるのだ。仮定を持ち込むなんてとんでもない邪道だ。学問の冒涜以外の何物でもない

シブサワ・コウは、「学者や科学者たちと呼ばれる人たちの一般的な態度」が、このようなものであるという。しかし、「学者や科学者たちと呼ばれる人たち」も、「具体的な事実の積み上げと客観的な分析」による「仮定」から「真理の究明」を行っているわけであり、その意味において、彼らほど歴史に「仮定を持ち込む」人々はいないと思われる。

さらに、個人的には、「具体的な事実の積み上げと客観的な分析」によって個々の情報を組み合わせ、それによって自分なりの歴史観を構築していくことほど、歴史を知るうえで面白いことはないと思うものである。



歴史の中の事実を発端としながらも、そこから自分なりの想像力を大きくふくらませていって、もし私だったら、その時どう決断し、どう行動したかに思いを巡らせる……

上記の「学者や科学者たちと呼ばれる人たちの一般的な態度」に対し、シブサワ・コウは「しかし、これではあまりにも味気ないのではないでしょうか」と自分の見解を示す。さらには、それが「歴史を楽しむ最大の醍醐味であり、神が人間にだけ与えた特権」とまで言ってしまう。

しかし、「もし私だったら、その時どう決断し、どう行動したかに思いを巡らせる……」にしても、我々は後世の人間であり、その決断と行動がもたらした結果を知っているわけである。そのため、そこから導き出される答えは、結果から逆算的して最適な行動を割り出しているに過ぎない。それが「自分なりの想像力を大きくふくらませ」ているのかというと、疑問の残るところである。

また、「もし私だったら」と考えるにしても、その時点でのシチュエーションを想定するための「具体的な事実の積み上げと客観的な分析」は、やはり必須であるように思われる。しかし、それを突き詰めていけば、その決断と行動に至るまでの必然的な要素が見えてくる。「もし私だったら」と考えることは、その必然性の一部を意図的に切り落とす作業に他ならない。

そうした要素を自分にとって都合の良い状況に組み替えるのだとしたら、それは「邪道」といわれても仕方のないことであるように思われる。また、そのような都合の良い状況であれば、歴史上の人物もまた別の決断を下したかもしれないとも考えてしまうのである。
 
 
歴史は語る

概要

本作の歴史的背景を主題とした読み物である。本作のテーマがユーラシア大陸と広大なこともあり、その内容も東には日本から西はイギリスまでバラエティに富んでいる。


 
本項の構成

 ページ  タイトル  副題
 40~43  歴史は語る①  モンゴル略奪婚の歴史
 48~51  歴史は語る②  ユーラシア国王群像
 54~57  歴史は語る③  頼朝式内政術
 90~95  歴史は語る④  疾風怒濤のモンゴル軍 その強さの秘密
 111~112  歴史は語る⑤  十字軍の戦略



備考

表のリンク先では、各項の注目点をまとめている。また、リンク先のタイトル部分のリンクは、上の表に戻るためのリンクである。


 
最近巷で大人気の武田信玄(91ページ)

チンギス・ハーンが陣頭指揮タイプの司令官ではなく、後方から全体を見据えるタイプの司令官であることについて、武田信玄を引合いに出している。「巷で大人気」というのは、本書が発行された1988年当時、大河ドラマで『武田信玄』を放映していたことを指すと思われる。


 
第5~7次の十字軍はエルサレムに寄りつくことすらできなかったため、この地図では省略した(112ページ)

112ページには第4回十字軍までの侵攻ルートが掲載されている。第5回以降のルートは、見出しの理由で掲載されていないが、そもそも第4回までの中でエルサレムに達した十字軍は第1回だけであり、その後、奪回されたエルサレムを領有できたのが、『元朝秘史』以降のシリーズに登場するフリードリヒ2世が率いる第6回十字軍(*1)である。

フリードリヒ2世は、当時のアイユーブ朝スルタンのアル=カーミルと交渉し、無血でエルサレムを領有することに成功した。当時、アル=カーミルは弟のアル=ムアッザムと敵対していたが、この弟がエルサレムを領有していたため、敵に占領されているくらいならば、同盟者の領土であった方がマシ(*2)という考えがあったようである。

もっとも、この行動はムスリムを憤慨させ、アル=カーミルの甥のアル=ナーシルの反乱を招いた。一方、フリードリヒ2世の方も、法王から破門されていたこともあってキリスト教圏での印象は悪く、10年の休戦期間を経た後、エルサレムはアイユーブ朝に奪回されている(*3)。
 
 
激動のユーラシアを生きた男たち

概要

 第2部内の読み物。本作の主要な登場人物の人間関係に主眼をおいている。



本項の構成

 ページ  タイトル  副題
 101~105  狼の息子たち  ジュチ チャガタイ オゴタイ トゥルイ
 106~107  反十字軍の英雄  サラディン
 108~110  愛憎物語  頼朝と義経
 
 
激戦再現

概要

第3部内の読み物。当時の代表的な戦闘を紹介している。ちなみに、日本の戦闘は紹介されていない。



本項の構成

 ページ  タイトル  副題
 138~139  激戦再現-1  蒙古軍、欧州を襲う ドニエプル川渡河作戦
 148~149  激戦再現-2  剥げ落ちた十字 ヴェネツィア商人の陰謀
 156~157  激戦再現-3  西夏絶滅の謎 ジンギスカン最後の戦い
 166~167  激戦再現-4  リチャード獅子心王VS.無敵サラディン
_
 
コラム

概要

 第2部の各所に挿入された縦半ページほどの読み物である。



本項の構成

 ページ  タイトル  内容の補足
 85  2度救われたヨーロッパ  グユクのヨーロッパ侵攻計画
 87  後鳥羽上皇の野望  承久の乱
 89  ジンギスカンと長春真人
 97  とらわれのリチャード1世
 
 
サウンドウェア誕生秘話

概要

本作で初めて導入されたという「サウンドウェア」の概要と、その製作秘話を紹介する。



どうにも腹の立つ上級生(207ページ)

シブサワ・コウの学生時代の上級生。見出しの通り相当の恨みがあったらしい。ワゴン車の運転席で仲間と彼の悪口で盛り上がっていたら、後部座席に彼がいたというエピソードも収録されている。その彼がサウンドウェアのプロデューサーであるが、本書だけでは、その人物を特定することはできない。



某有名作詞家U氏(207ページ)

「青き狼と白き牝鹿のテーマ(夢の旅人)」を作詞した作詞家。シブサワ・コウの幼馴染であるという。『光栄ゲーム用語辞典』によると、「夢の旅人」の作詞は売野雅勇(252ページ)とあり、イニシャル的にも一致するため、彼のことのようである。
 
 
*1

フリードリヒ2世はゲームには登場しないものの、本書49ページに記述がある。ただし、このエピソードは紹介されていない。


 
*2

アラブから見た十字軍』、344ページ。しかし、間もなくアル=ムアッザムは病死し、アル=カーミルにとっては分の悪い取引となってしまった。


 
*3

フリードリヒ2世の能力は、シリーズ中でも『元朝秘史』では平凡な能力であるが、『チンギスハーン』では最高クラスの知謀(PC版では最高の100だがPS版で少し下がり96となった)を持つ人物として評価が分かれている。