概要

「グラビア」とは言うものの、実質的には「モンゴル編」の族長、「世界編」の国王および各地域の情勢の紹介がメインとなっている。注目点としては、各国史としての紹介ではなく、地域史としての紹介になっており、地域ごとの国々の関わりが分かりやすくなっている点が挙げられる。

なお、ここでは勢力の国力と指導者の能力が5段階のアルファベットで評価されているが、第3部ではデータの詳細が掲載されている。このあたりは、うまく統合することで無駄を省くことができたのではないかと思われる。


 
本項の構成

 ページ  タイトル  内容
 8~13  超新星・モンゴル帝国  モンゴル編の部族
 14~17  鎌倉殿の思惑  日本の情勢
 18~23  アジア世界・イスラム世界  東アジア、中近東の情勢
 24~30  変動する欧州  ヨーロッパの情勢
 31~32  モンゴル帝国、中世の一断片  モンゴル帝国の果たした役割



備考

表のリンク先では、各項の注目点をまとめている。また、リンク先のタイトル部分のリンクは、上の表に戻るためのリンクである。
 
 
超新星・モンゴル帝国
 
オイラート部(12ページ)

本作では単に倒すべき勢力の1つでしかないが、史実ではチンギス・カンに服属して婚姻関係を結び、有力な親族として栄えた。さらに本書にもあるように、15世紀にはオイラートのエセン・カンがモンゴルを滅ぼしている。そうした事情から、15~16世紀を舞台とする『大航海時代Ⅲ』にもオイラートは1つの国家(*1)として登場している。


 
タヤンカン(12ページ)

『元朝秘史』以後は「ダヤン・ハーン」として登場する。しかし、綴りは「Tayang Qan(*2)」であるため、本作の方が正しいように思われる。これについては、15世紀に登場した「ダヤン・ハーン」と混同されている可能性がある。

追記。「ウイグル式モンゴル文字では、tとdは同一文字で表記される(『元朝秘史 上』 、133ページ)』」ということらしい。よって、どちらでも間違いではない、と言うか、今となってはどちらが正しいのかを判別する手段がないようである。日本語において、この手の書き分けが見られるのは、同名の人物を慣習的に区別するためと考えられる。



タヤンカンの弟クチュルクの出身地(12ページ)

「第12国◎ナイマン族」の項目では、このように解説されているが、「クチュル『ク』」は「クチュル『グ』」の誤記、タヤンカンの「弟」というのも「息子」の誤りである。本書195ページの「ユーラシア人物/用語事典」では、いずれも正しく記載されている。

追記。これも「中世のモンゴル語ではqとGは同一の文字で表記されることが多い(『元朝秘史 上』 、125ページ)」とのこと。よって、これもどちらでも正しいということになる。ただし、ゲーム上での表記の正誤については、上記の通りである。


 
その他の部族(13ページ)

本項ではテムジンを含めた11人の族長と部族の略歴が掲載されているが、キルギス族のチムスイ、トマット族のビスナム、ジェルキン族のサチャベキについては解説がない。

このうち、チムスイとサチャベキは『元朝秘史ハンドブック』で紹介されている(*3)が、ビスナムは『元朝秘史』には登場しない(*4)ため、その素性は不明なままである。おそらくは架空の人物なのではないかと思われる。
 
 
アジア世界・イスラム世界

宋は違約を理由とした金の侵入を受けて滅ぶことになる(20ページ)

1126年の「靖康の変」のこと。『水滸伝』シリーズ恒例の金国侵入イベントに相当する。この後、「皇帝の弟は江南に逃れて南宋を建てた」と続くが、この「皇帝」は徽宗の息子の欽宗、「弟」は、欽宗の弟の高宗のことである。
 
 
モンゴル帝国、中世の一断片

概要

本項では、モンゴル帝国が「これまで別個に発展してきた諸文化圏や地域をつなぎとめ、それだけに、それぞれの個性をも明らかに浮き彫りした」と定義する。つまり、モンゴル帝国の存在が、それまで個別に存在していた国々と文化圏を1つの舞台にまとめ上げたということである。

ここでは、その様子を「世界史を全体として見ることの面白さを、これほど的確に語り明かす例も珍しいだろう」と結んでいるが、その意見にはおおいに賛同したいところである。しかし、光栄の作品において、その系譜に連なるもの(*5)は少ない。
 
 
*1

大航海時代Ⅲハンドブック世界探究編』、54ページ。「コブド」の項。この時代のオイラートは、エセン・ハーンの死後、再興したモンゴルに押されて衰退傾向にある。


 
*2

綴りはWikipediaに基づく。


 
*3

サチャベキ(『元朝秘史』ではサチャ・ベキ)は、『元朝秘史ハンドブック』の174ページに解説がある。これによると、テムジンの命令に反発して討たれたことが分かる。チムスイは175ページで紹介されているが、架空の人物であることが明記されている。


 
*4

『元朝秘史』のトマット族族長はダイドフルである。『元朝秘史ハンドブック』の174ページには、彼の死後、后が実権を握ったことしか記されていないが、実在の人物として紹介されている。


 
*5

『蒼き狼と白き牝鹿』シリーズ以外には『大航海時代』がシリーズ化したくらいであり、あとは『エアーマネジメント』や『戦士の決断』などが思い浮かぶ。現在では、こうした世界規模のシミュレーションに関しては、圧倒的に海外の方が強い。