ハンドブック紹介

 

   水滸伝 天命の誓い ハンドブック  


 ●基本データ
 はじめに
 第一部 序盤戦略論
 第二部 中盤戦略論(空白地の領土化)
 第二部 中盤戦略論(義兄弟と委任)
 第二部 中盤戦略論(「梁山泊イベント」)
 第三部 戦術編(能力値)
 第三部 戦術編(攻略テクニック)
 第三部 戦術編(戦場)
 第四部 終盤戦略編
 第五部 データ編
 バトルレポート
 探求の書・1
 探求の書・2
 探求の書・3
 総合評価★★★★

基本データ

 初版の発行は1989年6月20日。本項では1990年5月31日に発行された第5版を参照している。ページ数は奥付まで含めて208ページ。定価は1860円。ナンバリングは「5」、本文デザインは中垣信夫+松田洋一、イラストレーションは岸井勲ほか。執筆者は非公表である。

 目次によると、本書は全5部の「攻略の書」から構成されており、第4部までは、その下にいくつかの「章」を持つ。また、これとは別に歴史読み物やプレイレポート、座談会などをまとめた「探求の書」が9項ある。

はじめに

 2~3ページ。ゼネラルプロデューサーのシブサワ・コウによる本書のコンセプトの紹介である。本書は「このニュータイプのゲームをより楽しんでいただくために企画」されたものであるが、「物語の背景や登場人物のプロフィールをもっと深く知って」もらうことこそが、「このゲームを二倍も三倍も楽しめる最大の秘訣」であるという。事実、本書の背景面に関するページは多く、それぞれが読み物として楽しめる。

 また、「本書のもうひとつの目的」は、「ゲームを進めるうえでのヒントを提供」することにある。ゲームの攻略本ならば主目的となるはずの要素が「本書のもうひとつの目的」になるのも、この時期の「ハンドブック」ならではと言える。しかし、そのために本書は、ゲームだけでなく、ゲームの背景をも包括した内容となっており、書籍そのものの面白さ、情報的価値を高めることに成功していると思われる。

第一部 序盤戦略論

 11~31ページ。副題は「無頼」。本部では、3つの章でシナリオ選択、逃亡、「ねぐら」の解説を行う。シナリオ選択については、4つのシナリオの状況のそれぞれを地図で表し、プレイヤーが選べる好漢の特徴、官軍を除いた勢力をプレイヤーが選択可能なものと不可能なものに分けて紹介している。なお、20ページのシナリオ4の勢力図で府州番号34(宣州)が空白地になっているのは誤植である。

 24ページでは「ねぐら」の選定基準として、「1.繁栄度、肥沃度が高い」、「2.武器屋や造船所がある」、「3.敵対者の土地に隣接していない」、「4.敵対者の土地ではない」の4点を挙げ、4から遡って優先度をつけている。これらの要求を満たす土地としては、府州番号13の延安府が挙げられる。

 本書では、「ねぐら」を決めた後は共鳴度の確保を最優先とし、そのために「奉仕」を行うことを推奨しているが、個人的には、先に強者の忠誠度を高めた方が良いと思われる。そのための資金は「狩猟」で得た「毛皮」を売ることで確保したいが、冬には狩猟ができない点に注意したい。忠誠度については29~30ページに記述があるが、低いと命令を無視することがあるため、「70」以上を確保することが好ましいという。

 共鳴度の確保についても、「奉仕」で地道に上げていくよりは、「狩猟」で得た食料を「施し」して一気に共鳴度を上げた方が良いと思われる。ただし、冬には狩猟ができないため、それが年末であれば、土地からの徴収は翌年に持ち越されることになる(徴収収入を得るためには共鳴度が「40」以上必要である)。

 その他にデータ面で見るべき点としては、暴動に対する対処策がある。暴動は共鳴度が40~55の時期に起こることがあり、金か食料を与えることで鎮めることができる。その分量は共鳴度、人気、物価などの影響を受けるが、食料ならば600~1200、最悪のシチュエーションでも、金600ならば、確実に収めることができるという(29ページ)。

第二部 中盤戦略論(空白地の領土化)

 43~61ページ。副題は「遊撃」。3つの章で領土の拡張を取り扱う。本作における領土の拡張はクリアの必須条件ではないが、クリアに必須の「人気」を上げるためには、領土の「共鳴度」を上昇させていくことが基本となる。最も手軽に領土を増やす手段は、強者を空白地に移すことであり、効率よく「共鳴度」を上げていくためには、あらかじめ食料を持ち込み、「施し」で一気に上昇させるのが良い(46ページ)。

 また、新たな領土で仲間を加えることを考慮するならば、彼らの「忠誠」を上げるための金も必要である(46ページ)。つまり、空白地を領土化する際には、ある程度の金と食料を持ち込む必要があることになる。ちなみに、好漢は場所を問わずに強者の「忠誠」を上げられるため、義兄弟で仲間を増やし、好漢で忠誠度を上げるという手法が使える。

 45ページでは、武器屋と造船所のある府州を紹介している。両方そろっている府州は14であるが、そのうちの9つ(シナリオ4では8つになる)が官軍領である。また、梁山泊に相当する府州番号10(州)は全シナリオで誰かしらの支配を受けており、府州番号7(登州)はシナリオ1で崔道成、3で鄒淵に支配されている。

 さらに、空白地のうち2つは官軍領に接しており、はじめから官軍の脅威にさらされることになる。そのため、府州番号13(延安府)が全シナリオを通じて安全な空白地であり、唯一の武器屋と造船所を兼ね備えた府州であるということになる。さらに、延安府には4つの城があり、20人の強者を滞在させることができるため、非常に優遇された環境にあると言える。

 また、47ページには、「パラメータ値のコマンドへの影響」の一覧表が掲載されている。ここでは船の「建造」に「技量」が「70」以上必要であることが掲載されているが、実際には「操舵」技能も必要である。また、「宴会」は「忠義」が低いほど効果が高いため、このためだけに忠義の低い人材を義兄弟とし、宴会係にするという手法も存在する。

第二部 中盤戦略論(義兄弟と委任)

 本作では1月に1回しかコマンドを行えず、好漢のいない領地では委任状態となるが、義兄弟の治める府州では、一部の制限があるとはいえ、好漢と同じようにプレイヤーが直接命令を下すことができる。つまり、実質的にコマンド回数を増やすことのできる非常に重要な要素である。なお、義兄弟は9人まで(57ページ)とあるが、これは難易度を一段階上げるごとに1人ずつ減っていく。

 さらに、好漢と主義(最も高い精神値が主義となる)の異なる義兄弟を作っておくと、好漢では主義の違いからスカウトできなかった人物を登用することができる。そのため、義兄弟の主義は好漢とはずらした方が良い(56ページ)。しかし、義兄弟を作る条件にも主義が絡んでくるため、極端に主義が異なる強者を義兄弟にすることは難しい。

 また、本作では委任中の方が内政の効率が良く(48ページ)、金がなくても、少しずつ兵士まで雇用してくれる。そのため、敵の領土と隣接しない限り、内政面を憂慮する必要はない。しかし、強者が複数いる府州では、勝手に人員を空白地に送り込み、敵と接してしまうことがあるため、「人事」の「方針」で「内政重視」を命じておきたい(61ページ)。

 本書では、「奉仕」による「共鳴度」の上昇を重視しているが、このCPUの内政功率の良さがあるため、プレイヤーが地道に「奉仕」を行うのは得策とは言えない。前述の通り、「施し」で共鳴度を上げ、徴収を確保できる体制を作ったら、あとはCPUに任せてしまった方が効果的である。

第二部 中盤戦略論(「梁山泊イベント」)

 「梁山泊イベント」は、特定条件を満たすことで人気が「100」上昇するイベントである。本作のクリア条件が人気を「250」にして勅命を得、高を倒すことであることを考慮するならば、その恩恵は限りなく大きい。

 条件については「ある地域を手に入れ、共鳴を得る(58ページ)」とあるが、「ある地域」とは府州番号10(州)と20(済州)であり、「共鳴を得る」とは両府州の「共鳴度」を上げることである(攻略サイトなどでは共鳴度は「90」以上とあるが、手持ちの書籍には実数的条件は掲載されていない)。なお、シナリオ4の宋江は、はじめから地域面の条件を満たしており、両府州の「共鳴度」を上げるだけでイベントを起こすことができる。

第三部 戦術編(能力値)

 73~129ページ。副題は「遠征」。全5章で戦争全般を解説する。本作では、強者の能力である「腕力」、「技量」、「知力」の全てが戦場に影響を及ぼす。まず、「腕力」は部隊の戦闘能力に直結する。「技量」は「40」以上で「消火」、「60」以上で「飛び道具」が使用でき、「85」以上で「飛び道具」が時々敵の体力を奪うようになる。また、「知力」は「60」以上で「火計」、「80」以上で「妖術(周囲2ヘクス)」、「90」以上で「妖術(周囲3ヘクス)」が使えるようになる。

 つまり、技量が「39」以下の強者は「消火」が行えず、「火計」を受けると逃げるしかない。うまくいけば、これで敵を城から追い出すことができる。また、技量が「59」以下の強者は「飛び道具」が使えないため、「飛び道具」で一方的に攻撃することができる。さらに、「妖術」の使用には体力が「50」以上あることが前提となるため、「技量」が「85」以上ある強者ならば、妖術使いの体力を削ることができるのである。

 各能力値については、77ページに「腕力」、81ページに「技量」、83ページに「知力」のベスト30を掲載している。このうち、「85」以上の「技量」は7人、「80」以上の「知力」は13人おり、「90」以上の知力は5人いる。本作では各種の作業で経験を積むと能力を上げることができるため、あと少しで能力を身に着けられる強者には積極的に経験を積ませたい。ちなみに、戦時の経験値については81ページ、平時の経験値については143ページに一覧表が掲載されている。

 本作では、全ての強者に固定の「体力」が設定されており、「休養」と「宴会」以外のほぼ全ての行動で消費される。特に「戦争」の「遠征」を行うだけでも「体力」を「10」消費する点に注意したい。攻撃側は、この時点でペナルティを背負っていることになる。なお、平時の体力の消耗については143ページに一覧表が掲載されているが、これに関しては記述がない。

 戦時の体力消耗については81ページに記述がある。特に「妖術」で「体力」を「20」消耗する点に注意したい。同ページの解説にもあるように、「妖術」は体力が「50」以上があることが使用条件であるため、1つの戦闘中に1人が「妖術」を2回使えることはほとんどない。さらに攻撃側は前述のとおり、攻め込んだ時点で「体力」を「10」消耗しているため、特に使用するタイミングを吟味する必要がある。

第三部 戦術編(攻略テクニック)

 75ページには必要機動力と地形効果が「地形HEXと守備効果」にまとめられている。このうち防御力が低いのは沼、川、湖であるが、守備側は城と城の周りにユニットを配置できるため、城の周囲に沼があるときには、CPUの部隊が沼に配置されることがある。このことを覚えておくと、府州番号10(州)や20(済州)など、激戦地になりやすいマップで多少有利に戦うことができる。

 本作では季節によって戦場が変化するというシステムが採用されている(90ページ)。まず、春は曇りが多く、妖術使いには有利である。夏は晴れが多く、火計が成功しやすい。秋は季節自体が火計の成功率を高め、冬は火が付きにくく、消えやすいという特徴がある。ただし、天気と季節の関連性は一部機種では再現されていないという。

 さらに冬には「湖」が「氷」となり、船を持っていなくても足を踏み入れることができるようになる。75ページの「地形HEXと守備効果」によると、氷の地形効果は平地と同じであるため、城攻めの際の集中攻撃がやりやすくなる。湖が城を取り囲んでいる府州番号10(州)や47(舒州)の攻略の際には役立つテクニックである。

 飛び道具を撃てる敵に隣接して「火計」で火をつけ、敵の行動を「消火」に回すことで飛び道具を防ぐ手法も、なかなか興味深い(81ページ)。しかし、城が密集しているマップでは、火計役が予想外の位置から敵の飛び道具を受け、敵に畳み込まれる可能性があるため、注意が必要である。また、同ページには技量が「85」以上の強者で敵の体力を削り、一騎討ちに必勝できる状態を作って経験値を稼ぐという手法も掲載されている。

第三部 戦術編(戦場)

 第4章の「要害」には、本作の戦場マップを掲載している。データ面では、隣接する州、地形の分類、城の数、武器屋と造船所の有無が紹介されているが、全体マップは掲載されていないため、ここだけで府州の位置関係を把握するのは難しい。必要に応じて14~20ページなどの全体マップを参照したい。

 また、解説欄にはシナリオ1の府州保有者や小者数などが記載されているが、総合的な各シナリオごとの滞在者や保有勢力や内政データなどは一切掲載されていない。しかし、強者の移動や登用が頻繁に行われることやCPUの内政の上昇値などを考慮すると、このようなデータにあまり意味がないことも事実である。個人的には、データの取捨選択としては間違っていないと考える。

 戦闘マップに関して、特に注意したいのは攻撃側の配置場所と川の位置関係である。本作では、船がないと川を渡ることができないため、下手をすると、戦場に赴くことさえできない部隊が登場することもある。特に船を配備する余裕のない序盤では注意したい。ゲーム内の「情報」を見る際、戦場マップを確認する項目があっても良かったと思うくらいである。

 その他には、官軍領の府州番号11(大名府)、19(隆徳府)、20(済州)、23(開封府)、24(河南府)、34(宣州)、43(江陵府)、45(江州)、47(舒州)に注目したい。特に23(開封府)は高の本拠地であり、必然的に戦いの舞台となる。その他には、また、全シナリオで誰かしらの領土となっている10(州)、25(河中府)なども、戦う機会が多く、地形を覚えて損のないマップである。

第四部 終盤戦略編

 139~149ページ。副題は「憂国」。全2章で官軍との戦いから高との戦いに決着をつけるまでを取り扱う。145ページには「官軍地データ一覧」が掲載されているが、これはシナリオ1を基準にしており、シナリオ4では府州番号20(済州)が宋江領となっている。また、官軍も未仕官の強者を登用するため、各種のデータはあまり役には立たない。

 原則的に、高は撤退できる場所があれば撤退してしまうため、彼にとどめを刺すためには、逃げ道をふさぐ必要がある。そのため、早急に彼のいる府州番号23(開封府)を狙うよりは、先に周囲の官軍領や空白地を占領した方が良い。

 また、141ページではぼかされているが、本作では1127年1月になると、金国が攻めてきて強制的にゲームオーバーとなる。1124年1月から警告が発せられるが、1月1回のコマンド入力と相まって意外と現実的な年代である。個人的には、ゲームの緊張感を高める非常に良いスパイスとなっていると思うが、このことは常に念頭に入れておきたい。ちなみに、1127年とは「靖康の変」によって北宋が滅亡した年であり、本書にも、この件を題材とした読み物がある。

第五部 データ編

 177~208ページ。副題は「強者たち」。本作の登場人物の経歴と顔グラフィック(「水滸伝名鑑」)と各種データ(「キャラクターデータ一覧」)を分けて紹介している。「水滸伝名鑑」は、50音順に1ページで12人の強者を掲載しているが、一〇八星については最終序列の決定までを紹介しており、その最期については省略されている。

 一方、その他の人物については原則的に出番を終えるところまでを紹介しているが、方臘や呂師嚢のように、劇中で死んでいても、そこまで描写されていない人物もいるため、注意が必要である。

 「キャラクターデータ一覧」は、強者のシナリオ1の身分と各精神値、能力値、登用難易度、操舵能力の有無を紹介している。1人あたりのデータは1ページ分に収められており、最も重要なデータである精神値と能力値は掲載されているが、「体力」が省略されているのは大きな問題である。中途半端にシナリオ1の身分だけを紹介するのであれば、こちらを優先した方が良かったのではないかと思われる。

 一方、ゲームでは確認できない登用難易度を掲載している点は評価できる。これは、最も登用しやすい人物を「A」とし、「E」までの5段階で難易度を表したものである。石秀や楊林など、序盤からスカウトできる優秀な人材が「A」なのは当然であるが、史文恭、鈕文忠、田虎といった猛者たちも「A」に分類されている。つまり、最序盤から彼らの登用を狙えるということである。

 なお、『光栄ゲーム用語事典』の296~298ページには、「体力」はもちろんのこと、全シナリオにおける全強者の所属、忠誠度、小者数が掲載されている。また、地味ではあるが、主義を表す「性格」の項があり、その人物の主義が一目でわかるようになっている。ただし、字は小さめで読みづらいという難点がある。

バトルレポート

 157~170ページ。「我が名は林冲」の副題通り、シナリオ1、ゲームレベル1の林冲で高を倒すところまでを収録している。プレイ的には失敗も多いが、それがかえって読み物としての緩急になっており、また反面教師的に学ぶべき部分も多い。

 まず、逃亡段階で潘金蓮を仲間に加えているが、「体力」の少ない彼女のために、休憩をはさんでいる描写がある(158ページ)。つまり、できるだけ早く旗揚げする必要のある最序盤において1ターンを無駄にしていることになる。このことからは、やはり最序盤においても仲間は吟味する必要があり、できるだけ主人公に随行できるだけの「体力」が必要であることを学ぶことができる。

 また、府州番号5(滄州)で旗揚げした(158ページ)のも、あまり評価できるものではない。ここは府州番号4(河間府)と6(青州)に接しているが、どちらに進んでも他勢力と接することになるためである。領土の拡張ができないというjことは、その分だけ「人気」を上げにくいということであり、さらにCPUの内政の速さを生かすことも難しくなる。

 一方、最序盤で李忠を義兄弟にしている点(160ページ)は、その思い切りの良さを評価することができる。能力的には低くても、早い段階で義兄弟を作れば、その分だけ行動の自由も広がるためである。しかし、その義兄弟に「奉仕」を行わせ続けたことは効率的とは言えない。ここは、西に人材登用の旅に向かわせるべきであったと思われる。

 義兄弟の解宝が「一騎討ち」に敗れ、大敗北を喫した(167ページ)事件は、学ぶべき教訓が多い。まず、義兄弟(好漢もだが)が捕えられると即敗北となるため、積極的に前線に出すべきではない。しかし、そのうえで彼らを戦力とするためには、「飛び道具」を使えることが望ましい。また、城にいるユニットに対しては「一騎討ち」を挑めないため、義兄弟や好漢を積極的に戦線に投入するのは、城を確保してからでも遅くないと思われる。

探求の書・1

 本書では、ゲームの攻略に関連した要素が「攻略の書」、原作および歴史背景に関連した要素が「探求の書」に分類されており、全9項目が「攻略の書」の各所に挿入されている。「巻頭グラフ(6~10ページ)の副題は「水滸伝の世界」、梁山泊、揚子江の岸辺、泰山の写真を背景に、短文とイラストで作品のイメージを表現する。

 「天命の誓い(32~42ページ)」の副題は「画本水滸伝」。『水滸伝』の名場面をイラストと文章で紹介する。ただし、その最後は「高を斬れ!」とゲームに即した形で締められている。言うまでもなく、これは原作と大きく乖離している。原作と混同しないように注意したい。

 「アウトローの砦(62~69)」の副題は「『水滸伝』の舞台」。執筆者は松平維秋である。ここでは『水滸伝』の物語構造と成立過程を踏まえ、史実の面から物語を追う。その体裁上、中心となるのは方臘との戦いであり、ここを読めば、本来の『水滸伝』のラストがわかる仕組みになっている。

 「アウトローの砦」に続く「林冲の4つの顔(70~72ページ)」の副題は「グラフィックの舞台裏」。各種グラフィックの制作過程を紹介する。まずはタイトル通り、3枚の没グラフィックを含めた林冲の顔グラフィックを紹介している。この没案のうち2枚は、卞祥と蕭嘉穂の顔グラフィックに流用された。

 また、林冲のイメージは「額が狭く両顎が張り、目は琥珀色、カーク・ダグラス、巨漢、武人」であるという。その他には、オープニングに登場する棒術家のアニメパターンやアニメーション確認用の棒人間状のグラフィックなども紹介されている。

探求の書・2

 「兵戈剣戟(130~138ページ)」の副題は「戦場の実際」。『水滸伝』の登場人物の武器を一通り紹介したのち、『水滸伝』特有の装備として火砲と連環馬を紹介する。また、ゲリラ戦や攻城戦に関する記述もあるが、こちらは『水滸伝』から乖離してしまっている印象がある。

 本項では連環馬について「こういった人馬もろとも装甲化するという発想は東洋人のものではない(136ページ)」ため、「当時、宋国に多く住み着いた色目人の傭兵なのではないだろうか(137ページ)」と推測しているが、これは誤りである。重装騎兵の概念は五胡十六国時代にはほぼ完成しており、同時代の慕容恪は連環馬そのものを352年の「魏昌城の戦い」に投入し、勝利を得ている。

 「『水滸伝』(150~156ページ)」の副題は「ゲーム的興奮の起源」。執筆者は荒俣宏である。まずは『水滸伝』と『三國演義』を対比させ、その構造の相違を明らかにする。これによると、『三國演義』が戦乱を舞台とする「役」の物語であり、山場となるのが裏切りや謀略などの「負」の力であるのに対し、『水滸伝』は反乱を舞台とする「乱」の物語であり、はじめから反逆者側が正義であるという絶対的前提に基づいた「正」の物語であるという。

 つまり、「仮りに反逆する側が絶対的善であれば、どんな手段を使って敵を攻撃しても許される(152ページ)」という構造が「正」の物語であり、『水滸伝』における無実の人間に罪を着せたり、拉致によって梁山泊に加盟させる描写も、それによって正当化されることになる。理屈は理解できるが、個人的には、それでも到底梁山泊(というか宋江)の行いは容認できるものではない。

 続いて、日本における『水滸伝』の影響を紹介する。ここでは、一般的に『水滸伝』ものの代表例とも思える『南総里見八犬伝』を「役」の物語とし、「乱」の物語としては建部綾足の『本朝水滸伝』を挙げる。日本における『水滸伝』ブームは江戸時代末期に起こり、この他にも数々の翻案ものが発表された。このブームの背景には、書き手としては物語の長さ、複雑さから来る解釈の多様さがあり、読み手としては、幕府に対する不満の投影があるという。

探求の書・3

 「金国侵入(171~173ページ)」のサブタイトルは「水滸伝の時代」。本作のタイムオーバーイベントである金国の侵入を中心に、遼の滅亡、靖康の変、南宋の成立などを解説する。この項だけを読むと宋は金に翻弄される悲劇の国家のようであるが、実際には金の弱体化をもくろみ、様々な工作を行っていたらしい。172ページの年表には1234年の金の滅亡までが掲載されているが、ここまで来ると完全に『蒼き狼と白き牝鹿』シリーズの範疇である。

 「マルチプレイ座談会(174~176ページ)は、本作の企画、開発、営業、デザイン、プロデューサーがシナリオ2のマルチプレイを行いながら、本作の楽しみ方を語るというものである。マルチプレイ向けの楽しみ方としては、「一定時間内に集めた仲間の数を競う」や、女性(9人)や坊主頭(10人)を集めるなどを提示している。

 その他にゲーム的な要素としてみるべき点は、内政をCPUに任せる際には精神値の高い者が好ましいこと、相性が悪い(主義が異なる)強者でも、府州を任せると忠誠度は落ちにくくなることなどがある。また、その他には、おとりの領土に官軍を攻め込ませ、手薄になった官軍領を占領するというテクニックを紹介している。

 しかし、この手段を使って官軍領を占領しても、多くの場合官軍領は他の官軍領とも接しているため、これらの領土から攻撃を受ける可能性がある。そのため、作戦成功後は、その府州を維持できるかどうかを計算に入れておく必要がある。また、おとりの府州にしても、相手が賄賂を求めてくる程度に共鳴度を上げておく必要があるため、それなりの下準備が必要である。

 ちなみに、この手段は「コンピュータが相手だからできる」ことである。これを「禁句」として、「コンピュータ・アルゴリズムの弱点をつく」ことを歓迎しない声が出ているが、個人的には、それによってもたらされるパズル的要素もまた、ゲーム性を高める一因となっているように思える。特に、後発の作品の中には、CPUが「コンピュータ・アルゴリズムの弱点をつく」必要がないほど、無謀な行動をするものも多い。むしろ、「コンピュータ・アルゴリズムの弱点をつく」必要のあるCPUは歓迎するところである。

総合評価★★★★

 ゲームの攻略情報、歴史(原作)的背景の解説、リプレイ、登場人物の略歴など、内容はバラエティに富み、それぞれのボリュームもある。特にゲームの情報面で隠しイベントの「梁山泊イベント」を紹介している点は好印象である。また、内政をCPUに任せるのは、CPUの優遇措置を利用するという一種のタブーであるが、その点をぼかしながらも活用を勧めている点も高く評価できる。

 データ面については、必須と言うべき情報はほぼ(人物情報の「体力」は欲しかったが)出そろっている。細かい点を見ると不備も多いが、ページ数の制約を考慮すれば、許容できる範囲である。

 一方 歴史(原作)的背景面の問題としては、本書には『水滸伝』そのもののあらすじがないため、本書だけで『水滸伝』を理解するのは難しい。これについては、別の書籍で知識を補う必要があるが、一部のマニュアルでは、それが補完されている。そのため、マニュアル込みで考えるのであれば、本書の内容も妥当な情報の取捨選択と言えなくもない。


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